筋トレが終わったら、30分以内にプロテインを飲む。

いわゆる「ゴールデンタイム」を意識して、トレーニング後すぐにプロテインを飲む人もいます。

ただ、30分という時間にそこまで神経質になる必要はなさそうです。

プロテインを飲むタイミングよりも、まず確認したいのは「一日にどれくらいたんぱく質を摂れているか」です。

現在の研究では、筋肉を増やすうえで、一日のたんぱく質摂取量が重要であることが繰り返し示されています。「トレーニング直後に飲むこと」がどこまで重要なのかについては、少し慎重に考える必要があります。

この記事では、プロテインの摂取量とタイミングについて、これまでの研究をもとに整理します。

まずは一日のたんぱく質量

筋トレとたんぱく質補給について調べたMortonら(2018)のメタ分析では、たんぱく質の補給によって、レジスタンストレーニングによる筋力や除脂肪量の増加が大きくなることが示されました。

では、多く摂れば摂るほどよいのでしょうか。

同じ研究では、摂取量が増えるほど効果も大きくなる傾向があります。ただし平均すると、1日あたり約1.6g/kg付近から除脂肪量への追加効果は小さくなっていきます。

なお、1.6g/kgは絶対的な上限ではありません。

「1.6g/kgまでは効果があり、それ以上は無駄」という意味ではなく、筋肉を増やしたい方が一日の摂取量を考える際の目安のひとつ、と捉えるのがよいでしょう。

体重ごとに計算すると、以下のようになります。

体重

1.6g/kgの場合

50kg

80g/日

60kg

96g/日

70kg

112g/日

80kg

128g/日

90kg

144g/日

たとえば体重70kgなら、1日112gが目安になります。

これはプロテインだけで112gを摂るという意味ではありません。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、普段の食事に含まれるたんぱく質もすべて含めた量です。

「筋トレ後30分」を逃したらダメ?

では、よく言われる「ゴールデンタイム」はどうなのでしょうか。

トレーニング前後にたんぱく質を摂ること自体には、筋たんぱく質合成を促すうえで意味があります。筋トレとたんぱく質摂取はどちらも筋たんぱく質合成を刺激するため、トレーニング前後に食事やプロテインを取り入れることは自然な選択です。

ただし、「筋トレ後30分以内でなければならない」となると話は別です。

Schoenfeldら(2013)は、プロテインを摂るタイミングと筋肥大・筋力の関係をメタ分析しています。

単純な解析では、トレーニングの近くでたんぱく質を摂った方が筋肥大に有利に見えました。

ところが、一日のたんぱく質摂取量などの違いを考慮すると、タイミングそのものによる明確な効果は確認できませんでした。

筋肥大との関連が強かったのは、一日のたんぱく質摂取量です。

つまり、「トレーニング直後に飲んだから筋肉が増えた」ように見えても、実際には一日のたんぱく質摂取量そのものが多かった可能性があります。

運動前と運動後を直接比べると?

2025年には、Casusoらが運動前と運動後のたんぱく質摂取を直接比較した研究を集め、メタ分析を行っています。

対象となったのは、4週間以上の介入を行った5研究(6報告)です。

除脂肪量については、運動前と運動後で明確な差は確認されませんでした。チェストプレスの筋力についても同様です。

一方、レッグプレスでは、運動前にたんぱく質を摂ったグループの方が大きく伸びる結果が出ています。

ここだけを見ると、「脚を鍛える日はトレーニング前に飲んだ方がよい」と考えたくなります。

ただ、現時点ではそこまで言い切れません。

上半身と下半身でタイミングの効果が違うかを見た解析でも差ははっきりせず、そもそも対象研究が少ないためです。著者らも、追加の研究が必要だとしています。

現時点では、レッグプレスの結果だけを根拠に、トレーニング前の摂取を推奨するには材料が足りません。

「運動後がよい」という研究もあります

運動後の摂取が有利である可能性を示した研究もあります。

Zhouら(2024)は、116試験、4,711人を対象に、たんぱく質の種類や摂取タイミングを比較しました。

運動後や夜間の摂取が、プラセボと比べて筋量・筋力などの指標で有利になる報告もあります。

ただし、この研究では「ネットワークメタ分析」という方法が使われています。

これは、たとえば「AとBを比べた研究」と「BとCを比べた研究」から、AとCの関係も推定する方法です。

多くの選択肢をまとめて比較できるメリットがありますが、運動前と運動後を同じ試験の中で直接比べる研究とは、結果の意味が少し異なります。

そのため、この研究だけをもとに「運動後が最もよい」と結論づけるのは早いでしょう。

著者らも、異なるタイミングを直接比較するRCT(ランダム化比較試験)がさらに必要だとしています。

トレーニング経験者ではどうだった?

Lakら(2024)は、筋トレ経験のある男性を対象に、1日約2g/kgのたんぱく質を摂りながら8週間トレーニングを行う実験を実施しました。

一方のグループはトレーニングの直前・直後、もう一方は約3時間前・3時間後にたんぱく質を多く摂取しました。

結果として、どちらのグループも筋量や筋力は向上しましたが、グループ間に明確な差は確認されませんでした。

少なくともこの実験では、一日のたんぱく質を十分に摂れている場合、摂取タイミングを数時間ずらしても大きな違いは見られませんでした。

なお、この論文には2025年に訂正が出ています。

訂正されたのは倫理審査機関と承認番号に関する情報で、この記事で紹介している筋量や筋力の結果が変更されたわけではありません。

では、タイミングは気にしなくていい?

ここまで読むと、「結局、いつ飲んでも同じなのでは?」と思うかもしれません。

ただ、そこまで言い切ることもできません。

タイミングを直接比較した長期研究はまだ多くありません。また、研究によってたんぱく質の種類や量、トレーニング内容、対象者も異なります。

そして、「明確な差が確認されなかった」ことと「絶対に差がない」ことは同じではありません。

今ある研究から言えるのは、

「タイミングは無意味」ではなく、「細かなタイミングより先に、一日の摂取量を確認した方がよさそう」

というところでしょう。

実際、どう飲めばいい?

まずは、一日にどれくらいたんぱく質を摂っているかを確認してみてください。

筋肉を増やしたい場合、1.6g/kg/日前後はひとつの目安になります。

それを一度にまとめて摂る必要はありません。1食20〜40g程度や、体重1kgあたり約0.4g/食といった目安も提案されています。

ただし、「必ずこの量を、この回数に分けなければならない」と決まっているわけではありません。

普段の食事に分けながら、必要な一日量を無理なく確保することを優先しましょう。

そのうえで、トレーニング前後にも食事やプロテインを取り入れます。

トレーニング後すぐに飲めるのであれば飲んで問題ありません。逆に30分を過ぎてしまったからといって、焦る必要もありません。

まとめ

プロテインをいつ飲むかを考えることに意味がないわけではありません。

ただ、その前に確認したいのが、一日に必要なたんぱく質を摂れているかです。

まずは一日の摂取量を確保する。

そのうえで、一日の中で無理なく分け、トレーニング前後にも取り入れる。

「筋トレ後30分を逃してしまった」と必要以上に気にする必要はありません。

今ある研究を見る限り、プロテインは「いつ」より先に「どれだけ」を考えるのがよさそうです。

免責

栄養・トレーニングに関する一般情報であり、医療行為の代替ではありません。疾患や食事制限がある場合は、医師・管理栄養士に相談してください。