「4〜5時間しか寝なくても平気」

そんな人を「ショートスリーパー」と呼ぶことがあります。

では、本当に人より短い睡眠だけで健康に生活できる人はいるのでしょうか。

結論から

生まれつき必要な睡眠時間が短いと考えられる人は実際に報告されています。

研究ではこうした人を、

Natural Short Sleeper(ナチュラルショートスリーパー)

あるいは、

Familial Natural Short Sleep(家族性自然短時間睡眠:FNSS)

などと呼びます。

ただし重要なのは、

「普段5時間しか寝ていない人」と「5時間程度の睡眠で本当に足りる人」は同じではない

ということです。

ショートスリーパーとは?

一般にショートスリーパーというと、睡眠時間が短い人全般を指すことがあります。

しかし研究上のナチュラルショートスリーパーは少し違います。

特徴的なのは、

  • 習慣的に睡眠時間が短い
  • 無理に睡眠を削っているわけではない
  • 長く眠りたいという強い欲求がない
  • 短時間睡眠でも明らかな日中機能の低下がみられない

といった点です。

つまり、

仕事が忙しくて毎日5時間しか寝られない

という状態は、ここでいうナチュラルショートスリーパーとは別です。

単に睡眠不足になっている可能性があります。

図1. 同じ“短い睡眠”でも中身は違う
図1. 同じ“短い睡眠”でも中身は違う

本当に4〜6時間程度で足りる人はいる

ナチュラルショートスリーパーが注目される大きな理由が、遺伝子研究です。

2009年、Heらは睡眠時間が短い家族を調べ、

DEC2(現在はBHLHE41とも呼ばれる)

という遺伝子の変異を報告しました。

この変異を持つ人では、通常より短い睡眠時間という特徴が確認されました。

さらに同じ変異を再現したマウスでも、睡眠時間が短くなりました。

つまり、

「睡眠時間が短い」という性質に遺伝的な要因が関係する

ことを示す重要な研究でした。

DEC2だけではない

その後の研究では、別の遺伝子も見つかっています。

ADRB1

2019年には、ADRB1という遺伝子の変異を持つ、自然に睡眠時間が短い家族が報告されました。

ADRB1は、β1アドレナリン受容体に関係する遺伝子です。

研究では人間の家族だけでなく、同じ変異を持たせたマウスでも短時間睡眠が確認されています。

NPSR1

同じ2019年には、NPSR1という遺伝子の変異も報告されています。

この変異を再現したマウスでは睡眠時間が短くなっただけでなく、睡眠不足による記憶への影響にも抵抗性を示しました。

GRM1

さらに2021年には、自然に睡眠時間が短い別々の2家族から、GRM1という同じ遺伝子の異なる変異が見つかりました。

こちらもマウスで短時間睡眠が再現されています。

つまり現在では、

「ショートスリーパー遺伝子」という1個の遺伝子がある

というより、

睡眠の必要量に影響する複数の遺伝的経路が存在する可能性がある

と考えた方が適切です。

図2. 短時間睡眠に関わる遺伝のイメージ
図2. 短時間睡眠に関わる遺伝のイメージ

ショートスリーパーは睡眠の「効率」がいい?

ここはまだ分かっていないことが多い部分です。

ナチュラルショートスリーパーは、

普通の人より短時間で睡眠の役割を果たせている可能性

が研究されています。

一部の研究では、深いノンレム睡眠に関連する徐波活動(Slow-Wave Activity)の違いなども報告されています。

ただし、

普通の人は8時間かかる回復を、ショートスリーパーなら4時間で終わらせられる

とまで単純に説明できる段階ではありません。

なぜ少ない睡眠で問題なく活動できるのか、その仕組みは現在も研究されています。

「5時間睡眠でも平気」ならショートスリーパー?

ここが一番注意したいところです。

自分で「平気」と感じることだけでは、ショートスリーパーとは判断できません。

2024年には、実際の睡眠時間をアクチグラフィーで確認したナチュラルショートスリーパーを対象に、主観的・客観的な眠気を調べた研究も発表されています。

ナチュラルショートスリーパー研究では、これまで本人による「日中問題なく活動できている」という自己申告に依存した研究が多かったこと自体が課題として指摘されています。

つまり、

「眠くないと思っている」ことと「睡眠が十分である」ことも完全には同じではありません。

図3. 主観だけでは判断できない
図3. 主観だけでは判断できない

ショートスリーパーになれる?

現在の研究からは、

睡眠時間を削ることでナチュラルショートスリーパーになれる、とは考えない方がよいでしょう。

研究されている家族性自然短時間睡眠では、遺伝的な特徴が繰り返し報告されています。

これは、

5時間睡眠を半年続ける
↓
体が慣れる
↓
ショートスリーパーになる

という話とはまったく違います。

睡眠時間を意図的に削ることは、

必要な睡眠量そのものを減らすのではなく、単に睡眠不足を作っている可能性があります。

「慣れた気がする」には注意

短時間睡眠を続けていると、

「もう5時間睡眠に慣れた」

と感じることがあります。

しかし、

主観的に慣れたことを、必要な睡眠時間が減った証拠にはできません。

これはナチュラルショートスリーパーと、慢性的に睡眠時間が短い人を区別するときに重要です。

前者はもともとの睡眠特性。

後者は生活によって睡眠時間を削っている状態。

見た目の睡眠時間が同じでも、中身は違う可能性があります。

遺伝子検査をすれば分かる?

これも単純ではありません。

これまで、

  • BHLHE41(DEC2)
  • ADRB1
  • NPSR1
  • GRM1

などの遺伝子変異が家族性自然短時間睡眠と関連して報告されています。

しかし、これらは非常に限られた家族を調べて発見された希少な変異です。

市販の遺伝子検査で、

あなたはショートスリーパーです

と簡単に判定できるようなものではありません。

また、まだ見つかっていない遺伝的要因が存在する可能性もあります。

何時間ならショートスリーパー?

「6時間未満ならショートスリーパー」

のように、睡眠時間だけで明確に線を引くことも難しいです。

研究では4〜6時間程度の睡眠をとる家族などが調べられていますが、重要なのは単純な時間ではありません。

短い睡眠が自然な状態であり、それ以上眠る必要性を感じず、日中の機能にも明らかな問題がないこと

がポイントです。

そのため、

4時間寝ている = ショートスリーパー

ではありません。

自分がショートスリーパーか考える前に

毎日5〜6時間しか寝ていない場合、

「自分はショートスリーパーだから大丈夫」

と考えるより、

もっと眠れる環境なら自然に何時間眠るのか

を見る方が現実的です。

たとえば、

目覚まし時計がない休日になると毎回2〜3時間長く眠る。

日中に強い眠気がある。

カフェインがないと集中できない。

朝起きるのが非常につらい。

こうした状態があるなら、少なくとも「短時間睡眠だけで十分」と自己判断する根拠にはなりません。

今日から試せること

図4. 実践の優先順位
図4. 実践の優先順位

1. 睡眠時間の短さだけで「ショートスリーパー」と決めない

忙しいから短いのか、本当に足りているのかを分けて考えます。

2. 休日に自然に長く眠っていないかを見る

目覚ましなしで毎回大幅に長く寝るなら、平日は不足している可能性があります。

3. 日中の眠気・集中・起床のつらさを見る

「平気」という感覚だけでなく、日中の状態も材料にします。

4. 睡眠を削ってショートスリーパーを目指さない

研究上の自然短時間睡眠は、削って慣れる話ではありません。

Logritの結論

ショートスリーパーは実在します。

自然に睡眠時間が短い家族を調べた研究からは、DEC2、ADRB1、NPSR1、GRM1など複数の遺伝子変異が発見されています。

ただし、

「睡眠時間が短い人」と「短い睡眠で本当に足りる人」は別です。

そして現在の研究から、

睡眠を削るトレーニングによってショートスリーパーになれる

とは言えません。

毎日5時間しか寝ていないからといって、

「自分はショートスリーパーなのかも」

と考える必要もありません。

本当に注目すべきなのは睡眠時間の短さではなく、

その睡眠時間が自分にとって本当に十分なのか

という点です。

免責事項

本記事は一般的な健康情報を目的としており、医療上の診断・治療を目的としたものではありません。