「減量中だから有酸素も入れたい。でも筋肉が落ちるのは困る」

「ランニングを始めてから、スクワットの重さが伸びなくなった気がする」

筋トレをしている人の間では、有酸素運動は筋肉を削るという話と、心肺のためにやったほうがいいという話の両方をよく見かけます。筋トレと有酸素運動を同じ時期に続けることを、研究では「コンカレントトレーニング」と呼びます。有酸素運動を足すと筋トレの効果が小さくなる現象は「干渉効果」と呼ばれ、40年以上前から調べられてきました。

この記事では、古い研究から順に読み、途中で見方がどう変わったかを追います。

有酸素が筋肉を削る、と言われるようになったのはなぜ?

話の出発点としてよく挙げられるのが、1980年に発表された研究です。参加者を、筋トレだけ、持久運動だけ、その両方の3グループに分けて10週間続けました。筋トレは週5日、持久運動は1日40分を週6日です。

両方を行ったグループの脚の筋力は、最初の7週間は筋トレだけのグループと同じペースで伸びました。ところが9〜10週目に伸びが止まり、下がり始めます。一方で、持久力の指標である最大酸素摂取量は、持久運動だけのグループと同じくらい増えていました。著者は、筋力と持久力を同時に鍛えると筋力の伸びが妨げられると結論づけています。

仕組みの説明として広まったのが、筋肉の中で起きる信号の話です。筋トレは筋たんぱく質の合成を進める「mTORC1」という経路を主に動かします。持久運動はエネルギー不足を感知する「AMPK」という経路を動かします。動物や細胞の実験では、AMPKがmTORC1の働きを抑えるという結果が出ていて、2つの信号がぶつかるのではないかと考えられてきました。立命館大学と東京大学の研究者による総説も、この信号どうしの干渉を干渉効果の説明の一つとして整理しています。

ただし1980年の研究は、筋トレも持久運動もかなり多い量でした。1つの研究の結果でもあります。信号の話も、多くは動物や細胞での結果です。たくさんの研究を合わせて見たとき、干渉はどのくらいの大きさなのでしょうか。

2012年に研究をまとめた分析は何を示した?

同じテーマの研究を集めて、結果をまとめて計算し直す分析があります。2012年に出たこの分析は21の研究を集め、筋トレだけ、持久運動だけ、両方の3つを比べました。

伸びの大きさを、測り方が違う研究どうしでも比べられる数字に直すと、結果は次のようになりました。数字が大きいほど、よく伸びたことを示します。

  • 筋肥大:筋トレだけ1.23、両方0.85、持久運動だけ0.27
  • 筋力:筋トレだけ1.76、両方1.44、持久運動だけ0.78
  • パワー:筋トレだけ0.91、両方0.55、持久運動だけ0.11

パワーは3つのグループの間すべてに統計的な差(偶然だけでは説明しにくい差)があり、両方を行ったグループは筋トレだけより伸びが小さくなりました。筋肥大と筋力でも、両方の平均は筋トレだけより低めです。ただし論文の要旨で統計的な差として示されたのは、持久運動だけのグループとの差でした。

この論文が注目されたのは、条件ごとの分析です。ランニングを組み合わせたときは、筋肥大と筋力の伸びが統計的に小さくなりました。自転車ではそうなりませんでした。さらに、有酸素運動の頻度が多いほど、1回の時間が長いほど、筋肥大・筋力・パワーの伸びが小さいという関係も見られています。著者らは、干渉効果は有酸素運動の種類・頻度・時間しだいで決まるとまとめました。

この結果を読むと、「有酸素をやるならバイクで、短く、少なめに」という考え方につながります。10年後、研究の数はおよそ倍になりました。その更新版を見てみます。

2022年の更新版では何が変わった?

2022年に、ドイツやスウェーデンなどの研究者が、研究をまとめた分析の更新版を発表しました。集めたのは43の研究、合わせて1,090人です。条件は少し厳しくしてあります。対象は健康な成人で、両方を4週間以上、指導者のもとで行った研究に限り、比べる相手は「同じ筋トレをして有酸素運動をしないグループ」に決めました。

比べる数字は、2つのグループで伸びがどれだけ違うかを、測り方の違う研究どうしでも比べられるように直したものです。0なら差がなく、マイナスなら両方を行ったグループの伸びが小さいことを示します。ここで比べているのは、筋肉が「減るか」ではなく、筋トレで「どれだけ増えたか」です。結果は次のとおりでした。

  • 最大筋力:−0.06(統計的な差なし)
  • 筋肥大:−0.01(統計的な差なし)
  • 瞬発力:−0.28(両方を行ったグループで伸びが小さい)

ここでの筋肥大は、MRIやCT、超音波で筋肉全体の断面積や厚みを測った研究と、DXA(X線で体の組成を測る装置)で脚の脂肪と骨を除いた重さ(主に筋肉)を測った研究に限っています。多くは太ももの前の筋肉です。瞬発力は、ジャンプの高さや、力をすばやく立ち上げる能力、レッグプレスのパワーで測っています。

最大筋力と筋肥大は、いくつかの条件で分けても統計的な差は出ていません。分けたのは、ランニングか自転車か、筋トレと有酸素運動を合わせた週の回数が5回を超えるか未満か、運動習慣の有無、平均年齢が40歳未満か以上か、です。瞬発力は、有酸素運動と筋トレの間が20分以内の「同じ回」で伸びが小さくなりました。3時間以上あけた研究では、統計的な差は出ていません。

2012年と2022年に研究をまとめた分析で、筋肥大・最大筋力・瞬発力・有酸素の量についての結論を比べた表

2012年と2022年に研究をまとめた分析の違い(Logrit編集部作成。数値はWilsonほか(2012)とSchumannほか(2022)の論文から引用)

著者らは、2012年の分析で見られた「有酸素運動の頻度や時間が多いほど筋肥大の伸びが小さい」という関係を確かめられなかった理由として、3つを挙げています。研究の数が増えたこと。2012年の分析は筋線維の太さの研究や、筋トレだけのグループがない研究も含んでいたこと。計算の方法が違うこと、です。筋肉をつくる一本一本の細胞、筋線維まで測った研究もあります。

筋線維のレベルでは違いが出た?

同じ研究グループが、筋線維の太さに絞って研究をまとめた分析も、2022年に出しています。筋肉の一部を針で採る生検で筋線維の太さを測った15研究、300人分の分析です。

筋線維全体では、両方を行ったグループの太くなり方が少し小さくなっていました(−0.23)。統計的な差があるかどうかの境目にあたる値です。持久的な働きをするI型線維(遅筋線維)では−0.34、瞬発的な働きをするII型線維(速筋線維)では−0.13で、どちらも単独では統計的な差に届いていません。

目を引くのは、有酸素運動がランニングだった研究です。I型線維では−0.81と、はっきりしたマイナスが出ました。自転車では統計的な差は出ていません。ただしランニングの研究は3つしかなく、自転車は12でした。著者らも、まだ確かめが必要な段階の結果だとしています。

筋肉全体の大きさ、筋線維の太さ、力の出し方(瞬発力)の3つを分けて示したイメージ図

イメージ図(実測値ではありません)

著者らは、筋線維で小さな差が出ても、筋全体の大きさの差になるとは限らないと書いています。筋線維の測定は1か所の生検で行うことが多く、測るたびのばらつきが大きい点にも触れています。筋全体と筋線維で見え方が違うことは分かりました。残る疑問は、筋トレ経験の長い人や男女で結果が違うかどうかです。

意外な点:差が出やすいのは「筋肉の大きさ」ではなかった

有酸素運動で心配されるのは、たいてい筋肉が小さくなることです。ところが研究で差が見えやすかったのは、大きさよりも「力の出し方」のほうでした。2022年の更新版で差が出たのは瞬発力で、筋肥大ではありません。

2021年に研究をまとめた分析は、脚の最大筋力(レッグプレスやスクワットを1回だけ挙げられる最大の重さ)を調べた27研究を集めています。対象は18〜40歳の健康な成人750人(7割が男性)です。3か月以上決まった練習を続けている人(競技者を含む)を「経験のある人」としています。経験のある人では、両方を行うと伸びが小さくなっていました(−0.35)。中程度の経験の人(−0.20)と未経験の人(0.03)では、統計的な差は出ていません。経験のある人のマイナスは同じ回(間が20分未満)に行った研究で見られ(−0.66)、別の回の研究では統計的な差は出ませんでした(−0.10)。2022年の更新版の著者らは、この分析とは研究の選び方や計算方法が違うと指摘しています。

2024年には、18〜50歳の健康な成人を対象にした59研究、1,346人分をまとめた分析も出ています。下半身の筋力の伸びが小さくなったのは男性(−0.43)で、女性(0.08)では統計的な差は出ていません。女性の研究は少なく、著者らも女性のデータを増やす必要があるとしています。筋肥大については、データが足りず結論を出せなかったとしています。

同じ回にやるときの順番を比べた10研究をまとめた分析もあります。対象は健康な成人で、5週間以上続けた研究です。筋トレを先にしたほうが、下半身の、重りを動かして測る筋力の伸び率が平均で6.91%大きくなりました。筋肥大には、順番による統計的な差は出ていません。

ここまでの分析では、筋肉の大きさより、瞬発力や、経験のある人が脚で出す最大筋力のほうが影響を受けやすそうです。では「差がなかった」という結果は、有酸素運動が筋肉に何の影響もないという意味なのでしょうか。

「差がない」は「影響ゼロ」という意味?

2022年の更新版で筋肥大に統計的な差が出なかったのは、15研究の平均を比べた結果です。差がないことは、影響がゼロだと証明されたこととは違います。対象の多くは数週間から数か月の研究で、測ったのは主に太ももの筋肉でした。本当の値がありそうな範囲は−0.16〜0.18と計算されています。小さなプラスにもマイナスにも振れうる幅です。

2012年と2022年の数字を並べて「下がった」「変わらない」と読むのも注意が必要です。2つの分析は集めた研究も計算の方法も違います。数字をそのまま比べられるものではありません。

もう一つ、研究が比べているのは「同じ筋トレ」に有酸素運動を足した場合です。疲れて筋トレの量が減ったり、減量中で食事が少なかったりする状況は、ここでの比較に含まれていません。研究どおりに筋トレの中身を保てているかどうかは、自分で確かめる必要があります。

この研究から言えないこと

ここで紹介した研究には、次のような限界があります。

  • ほとんどが数週間から数か月の研究で、何年も続けたときの影響は分からない
  • 参加者の多くは運動習慣のない人か、趣味で運動している人。競技レベルの筋力系の選手や女性のデータは少ない
  • 筋肥大の測定は主に脚の筋肉で、上半身の筋肉についてはあまり分からない
  • 有酸素運動の強度はそろえて分析できていない。HIIT(短い全力運動と休みを繰り返す方法)は別の問いになる
  • 減量中で食事を減らしている場合の影響は、これらの研究では調べていない
  • ランニングで筋線維に差が出たという結果は3研究だけにもとづく
  • 筋トレと有酸素運動の間を何時間あければよいか、有酸素運動を週何分までにすればよいかといった線は、今の研究からは決められない
  • mTORC1とAMPKの信号の話は、主に動物や細胞の実験から来ている。2022年の更新版の著者らは、人の研究ではこの仕組みが確かめられていないと述べている

Logritの結論

ここまでの研究を並べると、次のように言えそうです。

  • 1980年の研究では、量の多い筋トレと持久運動を続けると、9〜10週目に脚の筋力の伸びが止まった
  • 2012年に研究をまとめた分析では、両方を行ったグループの平均がやや低めで、ランニングの場合や、有酸素運動の頻度・時間が多いほど伸びが小さいという関係が見られた
  • 2022年の更新版では、筋肉全体の大きさと最大筋力の伸びに、平均して統計的な差は出なかった(主に数週間〜数か月の研究)
  • 一方で、筋線維のレベルでは小さなマイナスがあり、ランニングでI型線維に目立つという、まだ確かめが必要な結果がある
  • 差が出やすいのは瞬発力で、特に有酸素運動と筋トレを同じ回に行ったとき
  • トレーニング経験のある人や男性では、下半身の筋力の伸びが小さくなったという分析もある

有酸素運動を足しても、筋肉全体が小さくなるとは、今の研究のまとめでは示されていません。ただし影響がゼロとまでは言えず、瞬発力や、経験者の下半身の筋力では伸びが小さくなった報告があります。何を一番伸ばしたいかによって、組み合わせ方を変える余地があります。

今日から試せること

研究から言えるのは組み合わせの考え方までで、決まった時間や回数はありません。次の順で考えてみてください。

同じ回に行う、3時間以上あける、筋トレを先にする、の3つの組み合わせ方と研究結果を示したイメージ図

イメージ図(実測値ではありません)

  1. いま一番伸ばしたいものを決める。筋肉の大きさ、最大筋力、ジャンプやダッシュの瞬発力、心肺の体力のどれか
  2. 筋肉を大きくしたいのが目的なら、有酸素運動をやめる必要はなさそう。そのかわり、有酸素運動のために筋トレのセット数や重さを減らさない
  3. 瞬発力や脚の最大筋力を伸ばしたい時期は、有酸素運動と筋トレを同じ回に続けて行わず、時間をあけるか別の日にする。研究で差が出なかったのは3時間以上あけた条件だが、何時間あければよいかは決まっていない
  4. 同じ回にやるなら、筋トレを先、有酸素運動を後にする(脚の筋力の伸びが大きかったという分析がある)
  5. ランニングのあとに脚の疲れが残るなら、自転車など別の種目に置き換えるのも一つの方法
  6. 有酸素運動を増やすときは一度に大きく増やさず、筋トレの重さや回数が落ちていないかを記録で確かめる

心臓や血圧、関節に不安がある人や、持病のある人は、有酸素運動を始める前や量を増やす前に医師に相談してください。

参考文献

  1. Hickson RC. Interference of strength development by simultaneously training for strength and endurance. Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1980;45(2-3):255-63. PMID: 7193134 / DOI: 10.1007/BF00421333
  2. Makanae Y, Ogasawara R, Fujita S. Skeletal muscle signaling response to concurrent endurance and resistance exercise. J Phys Fitness Sports Med. 2015;4(2):217-221. DOI: 10.7600/jpfsm.4.217(PubMed未収載。J-STAGEで確認)
  3. Wilson JM, Marin PJ, Rhea MR, Wilson SM, Loenneke JP, Anderson JC. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res. 2012;26(8):2293-307. PMID: 22002517 / DOI: 10.1519/JSC.0b013e31823a3e2d
  4. Schumann M, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Freitag N, Rønnestad BR, Doma K, Lundberg TR. Compatibility of concurrent aerobic and strength training for skeletal muscle size and function: an updated systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2022;52(3):601-612. PMID: 34757594 / DOI: 10.1007/s40279-021-01587-7
  5. Lundberg TR, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Schumann M. The effects of concurrent aerobic and strength training on muscle fiber hypertrophy: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2022;52(10):2391-2403. PMID: 35476184 / DOI: 10.1007/s40279-022-01688-x
  6. Petré H, Hemmingsson E, Rosdahl H, Psilander N. Development of maximal dynamic strength during concurrent resistance and endurance training in untrained, moderately trained, and trained individuals: a systematic review and meta-analysis. Sports Med. 2021;51(5):991-1010. PMID: 33751469 / DOI: 10.1007/s40279-021-01426-9
  7. Huiberts RO, Wüst RCI, van der Zwaard S. Concurrent strength and endurance training: a systematic review and meta-analysis on the impact of sex and training status. Sports Med. 2024;54(2):485-503. PMID: 37847373 / DOI: 10.1007/s40279-023-01943-9
  8. Eddens L, van Someren K, Howatson G. The role of intra-session exercise sequence in the interference effect: a systematic review with meta-analysis. Sports Med. 2018;48(1):177-188. PMID: 28917030 / DOI: 10.1007/s40279-017-0784-1

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。持病のある人や、運動中に胸の痛み・息苦しさ・めまいなどが出る人は、医師に相談してください。