筋トレを始めたころは、翌日に階段を下りるのもつらいほどの筋肉痛が来ました。続けるうちに、同じメニューではほとんど痛くならなくなります。そうなると、もう筋肉に効いていないのでは、と不安になる人は多いでしょう。
反対に、筋肉痛が来るまで追い込まないと意味がない、と考えて、毎回メニューを変える人もいます。
筋肉痛と筋肉の増え方の関係について、研究で確かめられている範囲を見ていきます。
筋肉痛は、筋肉のダメージの大きさを表しているのか
筋トレのあと、1〜2日たってから出てくる痛みを、遅発性筋肉痛と呼びます。重りをゆっくり下ろす動きのように、筋肉が伸ばされながら力を出す動きで起こりやすいことが知られています。
まず確かめたいのは、痛みの強さが、筋肉がどれだけダメージを受けたかを表しているかどうかです。
2002年に報告されたオーストラリアの試験では、男子学生110人が、腕の力こぶの筋肉で、重りを全力でこらえながら下ろす動きを行いました。回数は12回・24回・60回の3通りです。そのあと4日間、筋力、腕の太さ(むくみ)、血液中の筋肉の酵素(クレアチンキナーゼ)、筋肉痛を測っています。
24回と60回のグループは、12回のグループより、筋力の落ち方、むくみ、酵素の上がり方のどれもが大きく、回復も遅くなりました。ところが、筋肉を押したときの痛みと、腕を曲げたときの痛みは、12回のグループと差がありませんでした。
押したときの痛みは、ほかのどの指標とも関係が見られませんでした。腕を伸ばしたときと曲げたときの痛みも、ほかの指標との関係は弱いものでした。著者らは、筋肉痛は筋肉のダメージの大きさをよく表していない、とまとめています。

では、ダメージそのものがなかったら、筋肉は増えないのでしょうか。
筋肉痛を起こさずに鍛えたら、筋肉は増えたのか
2011年に報告されたアメリカの試験は、この点を直接比べています。大学生14人(男性8人、女性6人)を7人ずつに分け、どちらのグループも、脚の筋肉が伸ばされながら力を出す特殊な自転車こぎを、1回20分・週3回、8週間続けました。8週間でこなした仕事量は、2つのグループでそろえています。
違いは始め方です。片方のグループは、本番の前に3週間かけて、1日5分の軽い負荷から少しずつ慣らしました。もう片方のグループは、いきなり本番の負荷から始めています。
いきなり始めたグループでは、血液中の筋肉の酵素が、慣らしたグループの5倍以上に上がり、筋肉痛も強く出ました。慣らしたグループでは、酵素はほぼ正常の範囲にとどまり、筋肉痛もほとんどありませんでした。
それでも8週間後、太ももの前の筋肉の体積は、慣らしたグループで6.5%、いきなり始めたグループで7.5%増え、2つのグループに差はありませんでした。筋力の伸びも25%と26%で、ほぼ同じです。

著者らは、筋肉が増えることは、はっきりしたダメージがなくても始まりうる、と書いています。
ただし、この試験は特殊な自転車こぎで、1グループ7人です。ふだんのウエイトトレーニングでは、筋肉痛と筋肉の増え方はどう関係しているのでしょうか。
10週間の筋トレで、筋肉痛はどう変わったか
2016年に報告されたブラジルとカナダの研究者による試験では、筋トレの経験がない若い男性10人が、週2回・10週間、レッグプレスとレッグエクステンションを行いました。どちらも1種目3セット、9〜12回で限界になる重さを、毎セット限界まで行っています。
1週目、3週目、10週目の筋トレのあとに、筋肉痛と筋肉のダメージを調べ、筋肉が新しいたんぱく質をつくる速さ(筋肉の合成の速さ)も測りました。
筋肉痛は、0〜100の目盛りで、1週目は筋トレの2日後に61でした。3週目には8〜10、10週目には8まで下がっています。筋肉のダメージも、1週目がいちばん大きく、3週目、10週目と小さくなりました。
筋肉の合成の速さは、筋肉痛の強かった1週目がいちばん高くなりました。しかし、1週目の上がり方は、10週間後に筋線維がどれだけ太くなったかとは関係していませんでした。
関係が見られたのは、筋肉痛がほとんどなくなった3週目と10週目の上がり方です。この2回の上がり方が大きかった人ほど、筋線維がよく太くなっていました。筋線維の太さは、10週目にだけ、はっきり増えています(約14%)。

著者らは、ダメージの大きい時期の合成は、主に傷んだ部分の修復に使われ、ダメージが小さくなってから、合成が筋肉を太くする方向に向かう、という見方を示しています。これは測った結果から考えた解釈で、直接確かめたものではありません。
同じ筋トレで、なぜ痛くなくなるのか
筋肉に強い負担をかける運動を一度すると、同じ運動を次にしたときは、筋肉痛やダメージが小さくなります。これを、繰り返し効果と呼びます。
2001年に報告された試験では、男子学生35人が、力こぶの筋肉で重りをこらえながら下ろす運動を、間をあけて2回行いました。間隔は6か月(14人)、9か月(11人)、12か月(10人)のどれかです。
6か月あけた人では、2回目のほうが筋肉痛が小さく、腕のむくみや筋肉の酵素の上がり方も小さくなりました。12か月あけた人では、この違いは見られませんでした。一度慣れた運動で痛くなりにくい状態は、少なくとも半年は続くということです。
同じメニューで筋肉痛が来なくなるのは、筋肉がその負担に慣れたからです。筋肉が増えなくなった、という意味ではありません。
取り違えやすい点
筋肉痛が強い筋トレほど筋肉が増える、とは言えません。2013年にアメリカの研究者2人がまとめた総説も、筋肉痛は筋トレの効果を測る物差しには向かない、としています。
かといって、筋肉痛が出たら逆効果、ということでもありません。始めたばかりの時期や、新しい種目を入れたときに筋肉痛が出るのは、ふつうのことです。
もうひとつ、筋肉痛が来ないことは、負荷が十分であることの証明にもなりません。同じ重さ・同じ回数のままなら、筋肉痛の有無に関係なく、いずれ伸びは止まります。
まだわかっていないこと
- 筋トレの経験が長い人で、筋肉痛やダメージの大きさが、数か月後の筋肉の増え方にどれだけ関係するか。紹介した試験の多くは、筋トレの経験がない人を対象にしている
- 女性や年齢の高い人で、同じことが言えるか。紹介した試験の参加者は、ほとんどが若い男性だった
- ダメージの大きい時期の合成が修復に使われる、という見方を、直接確かめた試験はまだない
筋肉痛がふだんより極端に強い、数日たっても腫れや痛みが増えていく、尿の色が濃い茶色になる、といった場合は、医療機関を受診してください。
まとめと今日から試せること
筋肉痛は、筋肉のダメージの大きさをよく表していませんでした。筋肉痛をほとんど起こさずに鍛えたグループでも、筋肉は同じように増えていました。10週間の筋トレでも、筋線維が太くなったことと関係していたのは、筋肉痛がほとんど消えたあとの反応でした。
筋肉痛は、効いているかどうかの目安にはなりません。目安にするなら、重さや回数が少しずつ伸びているかどうかです。
- 筋肉痛の有無ではなく、各種目の重さと回数を記録し、前回より伸びているかを見る
- 同じ重さで回数が上限まで届いたら、重さを上げる
- 筋肉痛を出すためだけに、毎回種目を入れ替えない
- 筋トレを始めたばかりの人や、久しぶりに再開する人は、最初の1〜2週間は軽めの重さとセット数で慣らす
- 強い筋肉痛が残っている日は、その部位の高重量を避け、ほかの部位を鍛える
参考文献
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- Schoenfeld BJ, Contreras B. Is postexercise muscle soreness a valid indicator of muscular adaptations? Strength Cond J. 2013;35(5):16-21. DOI: 10.1519/SSC.0b013e3182a61820



