筋肉をつけたくて、朝と練習後にプロテイン。食事でも肉や卵を意識して増やしている。体重1kgあたり2gを目指している人もいるでしょう。

その一方で、タンパク質を摂りすぎると腎臓に負担がかかる、という話もよく聞きます。健康診断で腎臓の数値を見て、気になったことがある人もいるかもしれません。

多めのタンパク質は、腎臓の働きを本当に悪くするのでしょうか。悪くするとしたら、誰にとっての話なのでしょうか。

なぜ「腎臓に負担」と言われるのか

タンパク質が体の中で分解されると、尿素などの老廃物ができます。これを血液からこし取って尿に出すのが腎臓です。タンパク質を多く摂れば、それだけ腎臓がこし取る量も増える、というのが「負担」の考え方です。

病気で腎臓の働きが落ちた人は、食事のタンパク質を控えるよう指導されることがあります。腎臓の病気の国際的な診療指針(KDIGO、2024年)は、eGFRが60未満まで下がった段階(G3〜G5)の慢性腎臓病がある成人について、タンパク質を1日に体重1kgあたり0.8gに保つよう勧めています。

ただ、これは病気のある人に向けた話です。病気のない人が多めに摂ったとき、腎臓の働きは変わるのでしょうか。

健康な人が多く摂ると、腎臓の数値はどう動いた?

腎臓の働きは、糸球体ろ過量(GFR)という数値で表します。腎臓が1分間にどれだけ血液をこし取れるかを示す値で、健康診断ではこれを血液検査から推定した「eGFR」が使われます。

2014年に、オーストリアの研究者が、慢性腎臓病のない人を対象にした30の研究(2,160人)をまとめた分析を発表しています。タンパク質の多い食事では、少ない・ふつうの食事と比べて、GFRが毎分7.18mL(体の大きさの差をならした値)多く増えていました。血液中の尿素や、尿に出るカルシウムの量も増えていました。

著者らは、肥満の人は腎臓の病気になりやすいことから、減量のために高タンパクの食事、特に動物性タンパク質の多い食事を勧めるときは注意が必要だとしています。

では、こし取る量が増えると、腎臓は傷んでいくのでしょうか。

増え方を比べると、何が見えた?

2018年に、カナダの研究者が、腎臓の病気のない成人を無作為に分けた28の試験(1,358人)をまとめています。多いグループの基準は、1日に体重1kgあたり1.5g以上、または食事のエネルギーの20%以上、または1日100g以上でした。

この分析は、2つの見方でGFRを比べました。食事を続けたあとのGFRだけを比べると、タンパク質の多いグループのほうがごくわずかに高くなっていました。一方で、始める前からどれだけ変わったかで比べると、グループの間に差はありませんでした。

著者らは、多めのタンパク質は健康な成人のGFRに悪い影響を与えないと結論しています。ただし、グループの分け方に偏りがなかったかどうかがはっきりしない試験が含まれていることを、限界として挙げています。

腎臓の病気がない人を対象にした2つの分析。2014年の分析(30の研究・2,160人)では、タンパク質の多い食事でGFRが毎分7.18mL(体の大きさの差をならした値)多く増えた。2018年の分析(28の試験・1,358人)では、続けたあとのGFRだけを比べると多いグループがごくわずかに高く、始める前からの変化で比べると差はなかった

ここまでは、腎臓の病気がない人を対象にした試験です。では、筋トレをしている人が、もっと多い量を長く続けたらどうなるでしょうか。

筋トレをしている人が1年続けた試験

2016年のアメリカの試験は、筋トレ歴が平均8.9年の男性14人を対象にしています。ふだんの食事の期間と、タンパク質を1日に体重1kgあたり3g以上に増やす期間を、それぞれ合計6か月ずつ入れ替えて、1年間続けました。

参加者が実際に摂っていた量は、ふだんの期間で1日に体重1kgあたり2.51g、増やした期間で3.32gでした。この1年で、血液中の脂質、肝臓、腎臓の働きの検査に悪い変化は見られませんでした。

筋トレをする人の中でもかなり多い量を1年続けた、数少ない試験です。ただし14人の男性だけで、食事は本人の記録にもとづいています。女性や年齢の高い人、何年も続けた場合のことは、この試験からはわかりません。

では、何年も追った研究では何が見えているのでしょうか。

何年も追った研究では

ここからは、多めの摂取と腎機能の低下が結びついた研究です。

2020年の韓国の研究は、地域に住む9,226人を2001年から2014年まで追いました。食事の質問票からタンパク質の摂取量で4つのグループに分けると、いちばん多いグループは、いちばん少ないグループに比べて、過剰ろ過になる割合が3.48倍でした。過剰ろ過は、年齢や性別、身長、体重などから予想されるeGFRより大きく高い状態で、この研究では上位5%を基準にしています。

さらに、いちばん多いグループでは、eGFRが1年に3以上下がる「速い低下」になる割合が1.32倍でした。この関係は、過剰ろ過があった人だけで見られました。

この研究は観察研究です。食事は質問票で聞いたもので、多く摂っていた人のほかの生活習慣が影響していた可能性は残ります。それでも、GFRの上昇を腎臓が元気なしるしとだけは読めないことを示す結果です。

もうひとつは、もともと腎臓の働きが少し低めの人を分けて調べた研究です。

もともと腎機能が低めの人では

2003年のアメリカの研究は、看護師を対象にした長期の研究から、42〜68歳の女性1,624人を11年間追いました。始めた時点のeGFRで、ふつうの人(80以上)と、少し低めの人(55〜80)に分けています。

eGFRがふつうの女性では、タンパク質の摂取量とeGFRの変化に関係は見られませんでした。

一方、少し低めの女性では、タンパク質を1日10g多く摂るごとに、11年間でeGFRが毎分1.69mL(同じく体の大きさの差をならした値)多く下がっていました。乳製品以外の動物性タンパク質でも、10gごとに1.21mL多く下がっていました。

42〜68歳の女性1,624人を11年間追った研究で、タンパク質を1日10g多く摂るごとのeGFRの変化。eGFRがふつうの女性ではプラス0.25で関係は見られず、少し低めの女性では総タンパク質でマイナス1.69、乳製品以外の動物性タンパク質でマイナス1.21

同じ「多めのタンパク質」でも、腎臓の働きが少し低めの人では違う結果が出ています。KDIGOの指針も、腎臓の病気が進むおそれのある成人では、1日に体重1kgあたり1.3gを超える摂取を避けるよう勧めています。

健康診断で腎臓の数値に要再検査や要受診の印がある人は、タンパク質を増やす前に医師に相談してください。印がなくても、eGFRが前の年より大きく下がっているときは、同じように相談してください。

研究の種類と対象者ごとにわかることを並べた表。健康な人の試験、筋トレ歴の長い男性の1年の試験、9,226人を追った韓国の観察研究、腎機能が低めの人の研究とKDIGOの指針の4つ

読み違えやすい点

まず、GFRの数値が上がることの意味です。健康な人の試験では、この上昇は腎機能の低下につながっていませんでした。観察研究では、過剰ろ過のある人で低下が速くなっていました。上がったことだけでは、良いとも悪いとも判断できません。

次に、健康な人の結果を、腎機能が低めの人に当てはめられないことです。2003年の研究では、同じ摂取量の差でも、eGFRがふつうの女性と少し低めの女性で結果が分かれました。

最後に、「差がなかった」の期間です。試験で差がなかったのは、数日から1年までの話です。何年も多めに摂り続けた試験は、まだありません。

研究から判断できないこと

  • 何年も多めのタンパク質を摂り続けたときの影響。長期の試験はなく、観察研究では食事以外の影響を区別できない
  • 女性や年齢の高い人が、筋トレをしながら体重1kgあたり2gを超える量を続けたときの影響。1年の試験は14人の男性だけだった
  • 糖尿病や高血圧があり、腎臓の病気になりやすい人への影響。紹介した試験は腎臓の病気のない人が中心で、この人たちに絞った結果はない
  • 腎臓の病気がある人が、どこまで摂ってよいか。この記事の研究からは判断できず、KDIGOの指針でも量は病気の進み方で変わる
  • 腎臓以外への影響。この記事では扱っていない

まとめと今日から試せること

腎臓の病気がない成人を対象にした試験では、タンパク質を多めに摂るとGFRは上がりますが、始める前からの変化で比べると、腎臓の働きに差はありませんでした。筋トレをしている男性が1日に体重1kgあたり2.5〜3.3gを1年続けた試験でも、腎臓の検査に悪い変化は出ていません。

一方で、もともと腎臓の働きが少し低めの女性では、多く摂るほどeGFRが下がる関係が見られ、国際的な指針も腎臓の病気が進むおそれのある人には多めの摂取を避けるよう勧めています。いまの研究で言えるのは、腎臓に問題がない人では数日から1年の範囲で悪い変化は見られていないこと、腎機能が低めの人では話が別になること、までです。

腎臓に問題がない人が筋肉をつけるための量の目安には、筋トレとタンパク質の補給を組み合わせた49の試験(1,863人)をまとめた2018年の分析が使えます。1日の総量が体重1kgあたり1.62gを超えると、除脂肪量(体重から脂肪を除いた重さ)の増え方はそれ以上大きくなりませんでした。

  • 健康診断の結果票で、eGFRと尿たんぱくの欄に要再検査・要受診の印がないか確かめる
  • 腎臓の数値に問題がなければ、体重×1.6gを計算し(70kgなら約112g)、3日分の食事とプロテインのタンパク質を足して比べる
  • タンパク質を増やした年は、次の健康診断のeGFRを前の年の値と並べて比べる

参考文献

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※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。腎臓の病気などで食事の指導を受けている人は、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。