「ホエイが高くなったから、ソイに替えてみた」
「でも、ソイだと筋肉のつき方が落ちるのでは」
ここ最近、Xではプロテインの値上がりをきっかけに、ホエイからソイに替えたという投稿をよく見かけます。値段の差を見ると替えたくなりますが、筋肉のつき方まで変わるなら話は別です。
ホエイは牛乳から、ソイは大豆から取り出したたんぱく質です。「筋肉をつけるならホエイ」という話は昔からあります。では、ソイに替えて数か月続けたとき、筋肉や筋力の伸びに違いは出るのでしょうか。
この記事では、1杯飲んだあとの数時間を測った研究から、数か月続けた研究、年齢で分けて調べた分析まで、順に読んでいきます。
ここで紹介する研究の多くは、持病のない成人を調べたものです。腎臓の病気がある人や食物アレルギーがある人、治療中の人は、記事の最後にある注意もあわせて読んでください。
「筋肉をつけるならホエイ」と言われるのはなぜ?
よく引き合いに出されるのが、2009年にカナダで行われた研究です。若い男性18人を6人ずつ3つのグループに分け、片脚の筋トレのあとに、ホエイ・ソイ・カゼインのどれかを飲んでもらいました。カゼインは牛乳に含まれる、ゆっくり消化されるたんぱく質です。必須アミノ酸(体内で作れず、食事からとる必要があるアミノ酸)の量は、どれも10gにそろえています。
飲んだあとの数時間で、筋肉のたんぱく質がどれだけ作られたかを測ると、筋トレのあとではホエイがソイより約31%高くなっていました。著者らは、消化の速さや、ロイシンというアミノ酸の量の違いが関わっているのかもしれないとしています。
たんぱく質の中身を調べた2018年の研究もあります。市販の植物性たんぱく質のうち、オーツ麦や小麦では必須アミノ酸の割合が21〜22%で、ホエイの43%を下回っていました。植物性のたんぱく質は、メチオニンやリシンというアミノ酸も少なめのものが多いとされています。
ただ、2009年の研究で測ったのは、1回飲んだあとの数時間の反応です。毎日飲みながら数か月筋トレを続けたら、筋肉の増え方にも同じような差が出るのでしょうか。
数か月続けた研究では、どうだった?
2018年に、6週間以上続けた筋トレの研究のうち、ソイと動物性のたんぱく質を比べた9本(参加者266人)をまとめた分析が出ています。5本はホエイとソイを、4本はソイと牛肉・牛乳などを比べたものです。
どちらのグループでもベンチプレスとスクワットの重さは伸びましたが、グループの間に統計的な差(偶然だけでは説明しにくい差)は見られませんでした。体重から脂肪を除いた重さ(除脂肪体重)の増え方でも、差はありませんでした。
一方で、ホエイのほうが増えたという研究もあります。2013年の研究では、筋トレの経験がない男女が、指導者のもとで約9か月(96回)の筋トレを続けました。毎日とる補給は、グループごとにホエイ、ソイ、炭水化物のどれかです。除脂肪体重はホエイで3.3kg、ソイで1.8kg、炭水化物で2.3kg増えています。ホエイの増え方は、ほかの2つより統計的に大きくなっていました。
この研究では、補給を含めた1日のたんぱく質は、ホエイとソイのグループがどちらも体重1kgあたり1.4gでした。1日にとるたんぱく質をもう少し多めにそろえたら、結果はどうなるのでしょうか。
1日のたんぱく質を多めにそろえたら?
2021年にブラジルで行われた研究は、ふだんからヴィーガン(動物性の食品をとらない食事)の若い男性19人と、肉なども食べる若い男性19人を比べました。どちらも筋トレの経験はなく、週2回の筋トレを指導者のもとで12週間続けています。
1日のたんぱく質は、どちらのグループも体重1kgあたり約1.6gになるよう、ヴィーガンのグループはソイで、もう一方はホエイで補いました。12週間で、脚の除脂肪量はどちらも1.2kg増えています。レッグプレスの1RM(1回だけ挙げられる最大の重さ)は、ヴィーガンのグループで97kg、もう一方で117kg伸びました。どの項目でも、グループの間に統計的な差は見られませんでした。

1日のたんぱく質をそろえて、ソイで補ったヴィーガンとホエイで補った雑食の人を比べた研究(Logrit編集部作成。数値はHevia-Larraínほか(2021)の論文の要旨から引用)
「体重1kgあたり1.6g」という数字は、別の分析にも出てきます。49の研究(1,863人)をまとめた2018年の分析では、たんぱく質の補給は筋トレによる筋肉と筋力の伸びを後押ししていました。そのうえで、1日の合計が体重1kgあたり約1.62gを超えると、除脂肪体重の伸びはそれ以上大きくならない傾向が見られています。
ここまでの研究の多くは、若い人が対象でした。年齢が違うと、たんぱく質の種類による差は変わるのでしょうか。
年齢で分けると、違いは出る?
2021年には、動物性と植物性のたんぱく質を比べた16本の研究をまとめた分析が出ています。どれも、参加者をくじ引きのように無作為に分けて比べた研究です。全体では、除脂肪量の増え方(kg)にも筋力にも、たんぱく質の種類による差は見られませんでした。ただし、体重に占める除脂肪量の割合では、動物性のほうがやや有利でした。
年齢で分けると、50歳未満の人では、動物性のたんぱく質のほうが除脂肪量が平均0.41kg多く増えていました。著者らは、動物性のたんぱく質は植物性より除脂肪量に有利な傾向があり、特に若い人でその傾向が見られるとまとめています。
高齢の人では、1回に飲む量も関わってきそうです。2012年の研究では、71歳前後の男性30人が、筋トレのあとにソイを0g・20g・40gのどれかで飲みました。20gでは、筋肉のたんぱく質が作られる速さは、0gのときと差がありませんでした。40gでは筋トレのあとに0gより高まりましたが、同じ年代の男性がホエイを飲んだ以前の研究の値には届いていません。
2024年には、中高年から高齢の人を対象に、筋トレとあわせてとったたんぱく質を種類ごとに比べた分析(78の研究、5,272人)も出ています。直接比べていない研究どうしも、共通の比較相手を通してつなげ、順位をつける方法です。ホエイ・牛乳・カゼイン・肉・ソイ・ピーナッツの6つのうち、筋肉の量を増やす効果はホエイがもっとも高い順位でした。ただし、この分析には入院中の人や施設で暮らす人など、病気のある人も含まれています。

年齢で分けて見た研究(Logrit編集部作成。Limほか(2021)、Yangほか(2012)、Liaoほか(2024)の論文の要旨から)
意外な点:数時間の差が、そのまま数か月の差になるとは限らない
「ホエイのほうが31%高い」という数字はわかりやすく、ソイは損だと感じさせます。けれども、これは1回飲んだあと数時間の反応です。数か月続けた研究では、ソイと動物性のたんぱく質で、筋肉や筋力の伸びに統計的な差が見られないものが多くありました。
それでも、ホエイのほうが増えた研究はあります。2013年の研究ではホエイの増え方が大きく、2021年の分析でも50歳未満では動物性がやや有利でした。研究によって結果が分かれているのが、いまの状況です。

ホエイ(動物性)とソイ(植物性)を比べた研究のまとめ(Logrit編集部作成。各論文の要旨から)
もうひとつ読み違えやすいのが、「差がなかった」の意味です。これは、どちらでも筋肉や筋力が伸びたうえで、伸び方に統計的な差が見つからなかったということです。まったく同じだと確かめられたわけではありません。小さな差があっても、参加者の少ない研究では見つけにくいことがあります。
この研究から言えないこと
ここで紹介した研究には、次のような限界があります。
- 数か月続けた研究の多くは、筋トレの経験がない若い成人が対象。鍛えている人や女性で同じ結果になるかは、まだ十分に調べられていない
- 2009年と2012年の研究は参加者が少なく(1グループ6〜10人)、飲んだあとの数時間だけを測ったもの
- 2012年の研究のホエイとの比較は、同じ研究チームの以前の研究の値と比べたもので、同時に無作為に分けて比べたものではない
- 研究で使われたのは、主にたんぱく質を取り出した粉末。市販のプロテインは種類も配合もさまざまで、同じ結果になるとは限らない
- エンドウ豆や米など、大豆以外の植物性たんぱく質は、ここではほとんど扱っていない
- 2024年の分析は中高年から高齢の人が対象で、病気のある人も含む。若い人や健康な人にそのまま当てはまるかはわからない
- 味や続けやすさ、おなかの調子、アレルギー、値段は、これらの研究では比べていない
Logritの結論
いまある研究からは、若い人が1日のたんぱく質を十分にとっている場合、ホエイをソイに替えても、数か月の筋肉や筋力の伸びに大きな差は出にくいと考えられます。ただし、ホエイのほうが増えたという研究もあり、結果は完全にはそろっていません。高齢の人では、ソイを1回に少なめの量で飲んでも、筋肉の合成は高まりにくいかもしれません。種類を選ぶ前に、まず1日の合計の量を確保する。いまある研究からは、この順番で考えるのが無理のない選び方です。
今日から試せること
最初に確かめてほしい条件があります。次にあてはまる人は、プロテインの量や種類を変える前に医師に相談してください。
- 腎臓の病気がある人、健康診断で腎臓の数値を指摘された人
- 大豆や牛乳のアレルギーがある人
- 持病のある人、病気の治療中の人
そのうえで、次の順で考えてみてください。
- まず、1日のたんぱく質の合計を確かめる。研究でよく出てくる目安は体重1kgあたり約1.6gで、体重60kgなら約96g、70kgなら約112g。食事とプロテインを合わせた量で考える
- 合計が足りている若い人では、ソイとホエイで伸び方に差が見られない研究が多い。そのうえで、値段や味、続けやすさも比べて選ぶ
- 高齢の人がソイに替えるときは、1回の量を少なくしすぎない。71歳前後の男性の研究では、20gでは筋肉の合成が高まらず、40gでは高まった
- 肉・魚・卵・乳製品も食べる人は、食事全体で動物性と植物性の両方をとれる。植物性のたんぱく質は、種類を組み合わせたり動物性と組み合わせたりすると、アミノ酸の偏りを補いやすいとされている
- 替えたあとも、扱う重さや回数を記録して、伸び方を見ていく
参考文献
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※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。持病のある人や治療中の人、腎臓の病気や食物アレルギーがある人は、たんぱく質の量や種類を変える前に医師に相談してください。