「黄身は脂質が多いから、白身だけ食べている」

「全卵のほうが筋肉にいいって聞いたけど、本当?」

ここ最近、Xでは卵とたんぱく質の話題をよく見かけます。ゆで卵を毎日の食事に入れている人もいれば、黄身を外して白身だけ食べている人もいます。黄身を食べるか外すかで、筋肉のつき方は変わるのでしょうか。

この記事では、全卵と卵白を食べ比べたあと数時間の反応を測った研究から、12週間続けた研究、ほかの食品と並べた研究まで、順に読んでいきます。最後に、黄身のコレステロールと心臓や血管の病気についての研究も見ます。

ここで紹介する研究の多くは、持病のない若い成人を調べたものです。コレステロールや血糖の値を指摘されている人、卵のアレルギーがある人、治療中の人は、記事の最後にある注意もあわせて読んでください。

黄身を外す人がいるのはなぜ?

卵白は、水分を除くとほとんどがたんぱく質で、脂質はほぼ含みません。黄身には、たんぱく質に加えて脂質やコレステロールが含まれています。体を絞りたい人や、コレステロールが気になる人が白身だけを食べるのは、このためです。

研究で使われた量で見てみます。たんぱく質を18gにそろえると、全卵では脂質が17gついてきますが、卵白では0gです。脂質17gは、計算するとおよそ150kcalにあたります。

たんぱく質の量が同じなら、黄身のぶんの脂質やほかの成分は、筋肉に何か違いを生むのでしょうか。

1回食べたあとの数時間では、どうだった?

2017年にアメリカで行われた研究では、筋トレの経験がある若い男性10人が、同じ人で両方を試す形で比べました。脚の筋トレのあとに、全卵か卵白のどちらかを、たんぱく質18gぶん食べてもらっています。

筋肉のたんぱく質がどれだけ作られたかを数時間にわたって測ると、全卵を食べたときのほうが、卵白のときより高くなっていました。血液に出てくるアミノ酸は卵白のほうが速く増えましたが、5時間で見た量は両方でほぼ同じでした。

同じ参加者の筋肉のサンプルを詳しく調べた2018年の報告では、筋肉の合成にかかわる仕組みの一部が、全卵のときだけ活発になっていました。著者らは、たんぱく質以外の成分が筋トレ後の反応にかかわっているのかもしれないとしています。

ただ、これは1回食べたあとの数時間の反応です。筋トレのたびに食べ続けたら、筋肉の増え方にも違いは出るのでしょうか。

12週間続けたら、筋肉の増え方は変わる?

2020〜2021年に、イランなどの研究チームが12週間の研究を報告しています。参加したのは筋トレの経験がある若い男性30人です。週3回の筋トレのすぐあとに、片方のグループは全卵を3個、もう片方は卵白を6個食べました。たんぱく質の量はそろえています。

12週間で、骨格筋の量は全卵のグループで2.9kg、卵白のグループで2.7kg増えました。脂肪の量はそれぞれ1.9kgと1.1kg減っています。どちらのグループでも体は変わり、著者らは、たんぱく質の量をそろえれば、卵白でも全卵と同じような体の変化になったとまとめています。

全卵3個と卵白6個を筋トレのあとに12週間食べ比べた研究の棒グラフ。骨格筋の量は全卵で2.9kg増、卵白で2.7kg増。脂肪の量は全卵で1.9kg減、卵白で1.1kg減。著者らは卵白でも全卵と同じような体の変化だったとまとめている

全卵3個と卵白6個を、筋トレのあとに12週間食べ比べた研究(Logrit編集部作成。数値はBagheriほか(2020)の論文の要旨から引用)

同じ研究チームによる別の報告では、太ももの前側の筋肉(膝を伸ばす筋肉)の量や断面積に、グループの間で差は見られませんでした。一方で、膝を伸ばす力と握力、体脂肪率、血液中のテストステロンは、全卵のグループのほうが大きく変わっていました。

筋肉の量では差が見られず、筋力や体脂肪率では全卵のほうが大きく変わる。測った項目によって、結果が分かれています。では、卵白をほかの食品と並べると、どうでしょうか。

ほかの食品と並べると?

2026年にイギリスの研究チームが報告した研究では、筋トレの経験がある健康な若い成人65人を、6つのグループに分けました。脚の筋トレのあとに食べたのは、卵白・全卵・サケ・豚肉・レンズ豆・マイコプロテイン(菌類から作るたんぱく質)のどれかです。たんぱく質の量は体重1kgあたり0.25gにそろえています。

筋肉のたんぱく質が作られる速さは、どのグループでも高まり、グループの間に統計的な差(偶然だけでは説明しにくい差)は見られませんでした。体全体で見たたんぱく質の収支(作られる量から分解される量を引いたもの)は、卵白のグループがもっとも大きなプラスでした。

ここまでは筋肉の話でした。黄身を外す理由としてもうひとつよく挙がるのが、コレステロールです。卵を食べる量と、心臓や血管の病気には関係があるのでしょうか。

黄身のコレステロールは、心臓や血管の病気と関係する?

2020年には、アメリカの3つの大きな調査をまとめた研究が出ています。参加者は、始めの時点で心臓や血管の病気、2型糖尿病、がんのなかった男女約21万6,000人です。最長32年にわたって、食事と病気の記録を追いました。

暮らし方や食事のほかの違いを調整すると、卵を1日1個以上食べる人の心臓や血管の病気のリスクは、月1個未満の人と比べて統計的な差がありませんでした(ハザード比0.93)。

同じ論文では、ほかの国の調査もあわせた分析(約172万人)も行っています。卵を1日1個多く食べることと、心臓や血管の病気のリスクとのあいだに関係は見られませんでした。アジアの調査に絞ると、リスクがやや低いという関係が見られました(関係を見たもので、卵が病気を防ぐことを示したものではありません)。著者らは、1日1個程度までの卵は、全体として心臓や血管の病気のリスクと関係しないとまとめています。

卵を食べる量と心臓や血管の病気のリスクを示す図。アメリカの3つの調査では1日1個以上と月1個未満の比較で0.93、ほかの国もあわせた分析では1日1個多く食べるごとに0.98で、どちらも統計的な差なし。アジアの調査では0.92でリスクがやや低い方向

卵を食べる量と心臓や血管の病気のリスクを調べた研究(Logrit編集部作成。数値はDrouin-Chartierほか(2020)の論文の要旨から引用)

ただし、この調査に参加した人の多くは、卵を週1〜5個未満食べていました。1日に何個も食べる人のデータは多くありません。

意外な点:数時間の差は、12週間の筋肉の量には表れなかった

「全卵のほうが筋肉の合成が高かった」と聞くと、黄身を外すのはもったいなく思えます。けれども、12週間続けた研究では、筋肉の量にはグループの間で差が見られませんでした。2026年の研究では、数時間の反応でも卵白と全卵に差は出ていません。

全卵と卵白を、たんぱく質の量をそろえて比べた4つの研究のまとめ。2017年の研究では筋トレ後に食べて数時間の筋肉の合成が全卵のほうが卵白より高かった。2020年の12週間の研究では筋肉の量はどちらも増え同じような変化だった。同じ研究チームの2021年の報告では膝を伸ばす力・握力・体脂肪率は全卵のほうが大きく変わった。2026年の研究では卵白・全卵・魚・肉・豆などで筋肉の合成に統計的な差はなかった

全卵と卵白を比べた研究のまとめ(Logrit編集部作成。各論文の要旨から)

一方で、12週間の研究では、筋力や体脂肪率は全卵のほうが大きく変わっていました。ただ、報告はこの1つの研究チームからのもので、参加者30人の小さな研究です。ほかの研究で同じ結果が出るかは、まだわかっていません。

もうひとつ気をつけたいのが、個数です。12週間の研究で食べていた全卵は、筋トレの日に3個でした。心臓や血管の病気との関係を調べた調査で、関係が見られなかったのは「1日1個程度まで」の範囲です。研究どうしで、調べている個数が違います。

この研究から言えないこと

ここで紹介した研究には、次のような限界があります。

  • 全卵と卵白を比べた研究は、どれも筋トレの経験がある若い人が対象。女性や高齢の人、筋トレを始めたばかりの人で同じ結果になるかは、ほとんど調べられていない
  • 数時間の反応を測った研究は参加者が少ない(10人、1グループ10〜11人)
  • 12週間の2つの報告は、同じ研究チームが同じ条件(30人)で行ったもの。今回調べた範囲では、別の研究チームによる長期の比較は見当たらなかった
  • 2026年の研究では、著者のうち2人が、研究を設計した時点で食品会社の社員だった(論文の利益相反の記載から)
  • 心臓や血管の病気の研究は、食べる量と病気の関係を追った調査で、卵が病気を防ぐか・起こすかを確かめたものではない。3つの調査は、アメリカの看護師や医療職の人を追ったものだった
  • 血液中のコレステロールの値が高い人や、糖尿病の人など、持病のある人にそのまま当てはまるかはわからない
  • 味や続けやすさ、満腹感、値段は、これらの研究では比べていない

Logritの結論

いまある研究(対象は筋トレの経験がある若い男性が中心)からは、たんぱく質の量をそろえていれば、黄身を外しても筋肉の増え方に大きな差は出にくいと考えられます。1回食べたあとの筋肉の合成は全卵のほうが高いという研究もありますが、差が見られなかった研究もあります。筋力や体脂肪率は全卵のほうが大きく変わったという報告は、まだ1つの研究チームだけです。卵と心臓や血管の病気との関係は、健康な人で1日1個程度までの範囲で調べられています。黄身を食べるかどうかを決める前に、まず1日のたんぱく質の合計が足りているかを確かめる。この順で考えるのが現実的です。

今日から試せること

最初に確かめてほしい条件があります。次にあてはまる人は、卵の食べ方や量を変える前に医師に相談してください。

  • 健康診断でコレステロールの値を指摘された人、脂質異常症の治療中の人
  • 糖尿病の人、心臓や血管の病気がある人
  • 卵のアレルギーがある人
  • 持病のある人、病気の治療中の人

そのうえで、次の順で考えてみてください。

  1. まず、1日のたんぱく質の合計を確かめる。卵だけでなく、肉・魚・大豆製品・乳製品・プロテインを合わせた量で考える
  2. いま卵白だけにしている人も、筋トレの経験がある若い男性の研究では、それだけで筋肉の増え方が大きく劣るという結果は出ていない。黄身を足すかどうかは、脂質やエネルギーの量、好みもあわせて考える
  3. 全卵の個数を増やすときは、研究で調べられている範囲を知っておく。心臓や血管の病気との関係が調べられているのは、主に1日1個程度まで。それより多い量は、データが多くない
  4. 全卵を使うときは、黄身のぶんの脂質も1日の食事に含めて考える。研究で使われた、たんぱく質18gぶんの全卵には、脂質がおよそ17g含まれる
  5. 食べ方を変えたあとも、扱う重さや回数、体重を記録して、変化を見ていく

参考文献

  1. van Vliet S, Shy EL, Abou Sawan S, et al. Consumption of whole eggs promotes greater stimulation of postexercise muscle protein synthesis than consumption of isonitrogenous amounts of egg whites in young men. Am J Clin Nutr. 2017;106(6):1401-1412. PMID: 28978542 / DOI: 10.3945/ajcn.117.159855
  2. Abou Sawan S, van Vliet S, West DWD, et al. Whole egg, but not egg white, ingestion induces mTOR colocalization with the lysosome after resistance exercise. Am J Physiol Cell Physiol. 2018;315(4):C537-C543. PMID: 30133322 / DOI: 10.1152/ajpcell.00225.2018
  3. Bagheri R, Hooshmand Moghadam B, Jo E, et al. Comparison of whole egg v. egg white ingestion during 12 weeks of resistance training on skeletal muscle regulatory markers in resistance-trained men. Br J Nutr. 2020;124(10):1035-1043. PMID: 32576297 / DOI: 10.1017/S0007114520002238
  4. Bagheri R, Hooshmand Moghadam B, Ashtary-Larky D, et al. Whole egg vs. egg white ingestion during 12 weeks of resistance training in trained young males: a randomized controlled trial. J Strength Cond Res. 2021;35(2):411-419. PMID: 33306586 / DOI: 10.1519/JSC.0000000000003922
  5. Haigh FA, Monteyne AJ, Abdelrahman DR, et al. Ingestion of diverse protein-rich whole-foods result in similar post exercise whole body and myofibrillar protein synthesis rates compared with a more isolated protein source in young adults. Am J Clin Nutr. 2026;123(4):101231. PMID: 41643855 / DOI: 10.1016/j.ajcnut.2026.101231
  6. Drouin-Chartier JP, Chen S, Li Y, et al. Egg consumption and risk of cardiovascular disease: three large prospective US cohort studies, systematic review, and updated meta-analysis. BMJ. 2020;368:m513. PMID: 32132002 / DOI: 10.1136/bmj.m513

※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。持病のある人や治療中の人、コレステロールや血糖の値を指摘されている人、卵のアレルギーがある人は、食事の内容や量を変える前に医師に相談してください。