トレーニングの前に少し寝ておく。ジムの帰りに昼寝をする。Xでも、昼寝や仮眠と運動の話題をよく見かけます。仮眠をとってからのほうが回数をこなせた、という記録もあれば、昼寝をしたら夜に眠れなくなった、という投稿もあります。

昼寝は、運動のパフォーマンスに関係するのでしょうか。関係するとしたら、何分くらい寝て、起きてからどのくらいで動けばいいのでしょうか。

この記事では、昼寝と運動の研究を順に読んでいきます。まず、睡眠が足りない人の短い昼寝の研究を見ます。そのあと、昼寝の長さを変えて比べた研究、たくさんの研究をまとめた分析、起きた直後の状態を細かく測った研究へと進みます。

ここで紹介する研究の多くは、運動習慣のある若い男性を対象に、研究室で決められた手順で行われたものです。日中の強い眠気が続いている人は、記事の最後にある注意もあわせて読んでください。

昼寝が運動に関係すると言われるのはなぜ?

昼寝をすると頭がすっきりする。疲れがとれて体が軽くなる。昼寝がすすめられるときによく聞く説明です。

スポーツ選手は、夜の睡眠が乱れやすいと言われています。足りない分を昼寝で補えば、パフォーマンスの落ち込みを防げるのではないか。そう考えて、昼寝の研究が行われてきました。

では、夜の睡眠が足りないときに昼寝をすると、実際に体の動きは変わるのでしょうか。

睡眠が4時間だった翌日に、30分寝たら?

2007年にイギリスで報告された研究では、健康な男性10人(平均23歳)が、夜の睡眠を23時から3時までの4時間に減らしました。翌日の13時から13時30分まで、昼寝をする日と、座って静かに過ごす日を比べています。

昼寝から30分後に測ると、眠気や注意力、短い時間の記憶は、昼寝をした日のほうがよい結果でした。2mと20mのダッシュのタイムも縮んでいます。20mのダッシュは、平均3.971秒から3.878秒になりました。

一方で、握力は昼寝をしてもしなくても変わりませんでした。

ただ、この研究は10人だけで、昼寝の長さは30分の1通りです。昼寝の長さを変えると、結果は変わるのでしょうか。

昼寝の長さを変えて比べると?

チュニジアの研究チームは、昼寝の長さを変えて比べる研究を続けています。

2019年の研究では、運動習慣のある男性17人(平均21歳)が、25分、35分、45分の昼寝と、昼寝なしの4つの条件で、5mの往復走を繰り返すテストを受けました。いちばん長く走れた距離は、昼寝なしと比べて、25分で6%、45分で9%伸びていました。合計の距離は、3つの長さのどれでも伸びています。伸び方は45分で8%、25分と35分で3%でした。

2020年の研究では、チームスポーツをしている男性14人(平均20歳)が、40分と90分の昼寝と、昼寝なしの3つの条件でテストを受けました。関節を動かさずに全力で力を入れたときの筋力、往復走、注意力は、どちらの長さの昼寝でもよくなっていました。よくなり方は、90分のほうが40分より大きく、筋肉痛やきつさの感じ方も90分のほうが小さくなっています。

昼寝の長さを変えて比べた2019年の研究の棒グラフ。5mの往復走の合計の距離は、昼寝なしと比べて25分と35分の昼寝で3%、45分の昼寝で8%伸びた。いちばん長く走れた距離は25分で6%、45分で9%伸び、35分では昼寝なしとの差は示されていない。2020年の別の研究では、40分と90分のどちらの昼寝でも筋力・往復走・注意力がよくなり、よくなり方は90分のほうが大きかった

昼寝の長さを変えて比べた研究での、昼寝なしとの違い(Logrit編集部作成。数値は各論文の要旨から引用)

これらの研究では、長い昼寝のほうが結果がよい傾向でした。ただ、どちらも十数人の研究です。次は、多くの研究をまとめて見た分析です。

たくさんの研究を合わせて見ると?

2021年には、運動習慣のある人やスポーツ選手を対象にした18の研究(合わせて326人)を、フランスなどの研究チームが整理しています。

18の研究のうち15で、昼寝によい影響が見られました。影響がはっきりしなかった研究は2つ、ダッシュのタイムが悪くなった研究が1つありました。著者らは、90分ほどの長い昼寝で、体の動きや頭の働きがよりよくなったとまとめています。そのうえで、研究の質にはばらつきがあり、結果は慎重に受け止める必要があるとも書いています。

2023年には、スペインの研究チームが、22の研究(18〜35歳の男性291人)を合わせて分析しました。前の晩にふつうに眠れていた場合でも、昼寝をすると、体の動きと頭の働きがよくなり、疲れの感じ方は小さくなっていました。睡眠が足りなかった場合も、同じ傾向でした。昼寝の時間帯は12時30分から16時50分で、いちばん多かったのは14時でした。

この分析で効果が大きかったのは、昼寝の長さが30分以上60分未満のときと、起きてからテストまで1時間以上空いていたときでした。

昼寝と運動の研究をまとめた2つの分析。2021年の分析は18の研究・326人で、15の研究でよい影響、2つではっきりせず、1つでダッシュが悪化。90分ほどの長い昼寝でよりよい結果だったが、研究の質にはばらつきがある。2023年の分析は22の研究・18〜35歳の男性291人で、昼寝の長さが30分以上60分未満のときと、起きてからテストまで1時間以上空いたときに効果が大きかった。昼寝の時間帯は12時30分〜16時50分で、いちばん多かったのは14時

昼寝と運動の研究を合わせて見た2つの分析の要点(Logrit編集部作成。数値は各論文の要旨から引用)

起きてすぐ動くと、どうなる?

2026年には、オーストラリアなどの研究チームが、運動習慣のある男女17人(平均23歳)を対象に、起きたあとの2時間を細かく測っています。昼寝をしない日と、25分または90分の昼寝をとる日を比べ、起きてから30分ごとに、眠気や反応の速さ、握力、ジャンプの高さを調べました。

起きてから30分までは、25分でも90分でも、すべての項目でその後の時間帯より成績が低くなっていました。眠気や握力などの落ち込みは、90分の昼寝のほうが大きくなっています。起きてから60〜90分たつと、どちらの昼寝でも多くの項目がよくなりました。90〜120分では、眠気や疲れの感じ方、握力などで、90分の昼寝がほかの条件よりよい結果でした。著者らは、起きたあとのぼんやりした状態が抜けるまでに、少なくとも1時間はかかるとまとめています。

もっと短い昼寝を比べた研究もあります。2006年のオーストラリアの研究では、夜の睡眠を約5時間に減らした若い大人24人が、15時に5分、10分、20分、30分の昼寝をしました。10分の昼寝では、起きてすぐに眠気が減り、頭の働きもよくなりました。30分の昼寝では、起きた直後に注意力や成績が一度落ちてからよくなっています。ただし、この研究で測ったのは眠気や頭の働きで、体の動きは測っていません。

25分と90分の昼寝のあと、起きてからの時間ごとの成績を示す模式図。起きてから0〜30分は、どちらの昼寝でもその後の時間帯より成績が低く、90分のほうが落ち込みが大きい項目もあった。60〜90分では多くの項目がよくなり、90〜120分では眠気や疲れの感じ方、握力などで90分の昼寝が上回った

25分と90分の昼寝のあと、起きてからの時間でパフォーマンスがどう変わったか(Logrit編集部作成。Boukhrisほか(2026)の論文の要旨をもとにした模式図)

意外な点:起きた直後は、むしろ落ちていた

昼寝をすれば、すぐに体が軽くなる。そう思いがちですが、2026年の研究では、起きてから30分までの成績は、その後の時間帯より低くなっていました。長く寝たほうがあとの伸びは大きい一方で、起きた直後の落ち込みも大きくなっていました。

もうひとつは、何を測るかで結果が違ったことです。ダッシュや往復走、全力で力を入れたときの筋力では、昼寝のあとによくなった研究が多くありました。一方で、2007年の研究の握力は変わりませんでした。昼寝がどんな運動にも同じように効くとは、まだ言えません。

この研究から言えないこと

ここで紹介した研究には、次のような限界があります。

  • 対象の多くは、運動習慣のある18〜35歳ほどの男性。女性、中高年、運動を始めたばかりの人に当てはまるかはわからない
  • 一つひとつの研究は10〜24人ほどと小さく、研究どうしの結果のばらつきも大きかった
  • 測ったのは、ダッシュや往復走、ジャンプ、握力など、短い時間で全力を出す動きが中心。ベンチプレスなどで挙げられる重さや回数を直接測った研究は、ここにはない
  • どれも1回の昼寝の直後の変化を見たもの。昼寝を続けると、筋肉や筋力が長い目で見て増えやすくなるかはわからない
  • 昼寝は研究室の静かな部屋などで、決められた時間にとったもの。職場や家で同じように眠れるとは限らない
  • 昼寝が夜の睡眠にどう響くかは、これらの研究では調べていない

Logritの結論

いまある研究からは、昼寝のあとに短い時間で全力を出す運動の成績がよくなることがある、と考えられます。前の晩に眠れていた場合でも、睡眠が足りなかった場合でも、同じ傾向でした。ただし、起きた直後はかえって成績が落ちることがあり、その状態が抜けるまで少なくとも1時間ほどかかっていました。研究を合わせた分析で効果が大きかったのは、30分以上60分未満の昼寝で、起きてから1時間以上空けたときでした。対象の多くは若い男性で、筋トレで挙げられる重さを直接測った研究は、ここで読んだ中にはありません。昼寝はパフォーマンスを確実に上げる方法とまでは言えません。夜の睡眠を整えたうえで、予定に合わせて試してみるもの、と考えるのが現実的です。

今日から試せること

最初に確かめてほしいことがあります。夜しっかり寝ても日中の強い眠気が続く人、いびきや睡眠中の呼吸の止まりを指摘されたことがある人は、昼寝で補う前に医療機関に相談してください。睡眠の病気が隠れていることがあります。

そのうえで、次の順で考えてみてください。

  1. まず、夜の睡眠を確保する。昼寝は夜の睡眠の代わりにはならない
  2. 昼寝のあとにトレーニングをするなら、起きてから1時間ほど空ける。研究では、起きてから30分までは、その後より成績が低かった
  3. 昼寝の長さは、そのあとの予定に合わせて決める。研究を合わせた分析では30分以上60分未満の効果が大きかった。起きてすぐ動く予定なら、短めにしておくほうが落ち込みは小さいかもしれない(2026年の研究では、90分の昼寝のほうが起きた直後の落ち込みが大きかった)
  4. 時間帯は、研究で使われていた昼過ぎ(12時30分〜16時50分、いちばん多かったのは14時)を目安にする
  5. 昼寝をした日としなかった日で、夜の寝つきやトレーニングの調子がどう違うかを、自分で記録して見比べる

参考文献

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※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。日中の強い眠気が続く人や、睡眠に不安がある人は、医療機関に相談してください。