部活で筋トレを始めたら、親に「背が伸びなくなるからやめなさい」と言われた。子どもに筋トレをさせたいけれど、身長が止まらないか心配。中学生や高校生の筋トレと身長は、昔からよく気にされる組み合わせです。

背が伸びる時期に重いものを持つと、骨の伸びる部分が傷ついて身長が止まる。そんな説明を聞いたことがある人もいるでしょう。

成長期の筋トレと身長について、研究で確かめられている範囲を見ていきます。

「筋トレで身長が止まる」はどこから来た話か

子どもの骨の両端近くには、骨端線(成長板)と呼ばれるやわらかい軟骨の部分があります。背が伸びるのは、ここで骨がつくられて長くなるからです。成長が終わると骨端線は閉じ、それ以上は伸びなくなります。

骨端線は大人の骨よりやわらかいため、重いものを持つと傷つき、背が伸びなくなるのではないかと心配されてきました。体操選手や重量挙げの選手に小柄な人が多いことも、この話の根拠のように語られます。

では、実際に子どもに筋トレを続けてもらうと、身長の伸びは変わるのでしょうか。

小学生に2年間筋トレをさせたら、身長の伸びは変わったか

2001年に報告されたイスラエルの試験では、9歳の男の子49人が2つのグループに分かれました。27人は、ふだんの体育に加えて、週2回の筋トレを2学年分(21か月)続けました。22人は、ふだんの体育だけです。

筋トレは、少しずつ重さを上げていく方法で行われました。21か月後、筋力は筋トレをしたグループのほうが大きく伸びています。

身長の伸びは、2つのグループで差がありませんでした。21か月のあいだに起きたケガは、軽いものが1件だけでした。

9歳の男の子49人を21か月追った試験。ふだんの体育に加えて週2回の筋トレをした27人と、体育だけの22人で、身長の伸びは同じだった。筋力は筋トレをしたグループのほうが大きく伸び、ケガは軽いものが1件だけだった

ただ、これは1つの試験です。ほかの試験も合わせると、どうなるのでしょうか。

22の試験をまとめると、身長への影響はあったか

2006年に、アメリカの研究者が、思春期の前から始めごろの子どもを対象にした筋トレの試験22件をまとめています。多くは、マシンやダンベル・バーベルを使い、週2〜3回、8〜12週間の試験でした。

どの試験でも筋力は上がり、筋トレをやめると元に戻っていきました。身長と体重の伸びには、筋トレによる影響は見られませんでした。

ケガをきちんと記録していた試験は10件で、報告されたケガは合わせて3件でした。練習100時間あたりにすると、0.053〜0.176件です。練習570〜1,900時間に1件の割合です。著者は、指導者がつき、1人の指導者が見る人数を少なくした筋トレなら比較的安全で、成長や成熟に悪い影響はない、とまとめています。

思春期の前から始めごろの子どもを対象にした筋トレの試験22件をまとめた検討。多くは週2〜3回・8〜12週間で、身長と体重の伸びに影響は見られなかった。ケガは練習100時間あたり0.053〜0.176件で、練習570〜1,900時間に1件の割合だった

体操選手の背が低いのは、練習のせいか

体操選手に小柄な人が多いのは事実です。2013年に、国際体操連盟が集めた専門家の委員会が、この点を調べた研究をまとめています。

委員会が注目したのは、誰が競技を続けているかです。体操を続けている子どもは、もともと年齢のわりに小柄な子が多い、選ばれた集団でした。成長のしかたも、体操をしていない、小柄で成長の遅い子どもとよく似ていました。

委員会は、激しい練習が大人になったときの身長を低くするとは、今あるデータからは言えない、としています。小柄な子が体操で有利になり、競技に残っている、という見方です。

骨端線はケガしないのか

2014年に、イギリスの筋力トレーニングの専門団体が中心となり、スポーツ医学や小児科の団体も支持した国際的な見解が出されています。

この見解は、筋トレで骨端線が傷つくという心配は、研究や診療の記録で裏づけられていない、と書いています。筋トレや体操、重量挙げで骨にかかる刺激は、むしろ骨がつくられ、育つのに役立つ可能性がある、としています。

一方で、ケガが起きないわけではありません。2009年に報告されたアメリカの調査では、2002〜2005年に筋トレのケガで救急外来に来た8〜30歳の4,111人を、年齢ごとに比べています。

8〜13歳は、ほかの年齢より、重りを落とした、器具に挟んだといった事故によるケガが多くなりました。この年齢のケガの3分の2は手と足で、骨折の割合もほかの年齢より高くなっています。反対に、ねんざや肉離れの割合は、年齢が上がるほど高くなりました。

著者らは、子どものケガの多くは、大人が見守り、安全のルールを決めれば防げる事故だ、としています。

筋トレのケガで救急外来に来た8〜30歳の4,111人の調査。8〜13歳のケガの3分の2が手と足で、重りを落とす・器具に挟む事故が多く、骨折の割合も高かった。ねんざや肉離れの割合は、年齢が上がるほど高かった

取り違えやすい点

筋トレで身長が止まる、という研究結果はありませんでした。ただし、筋トレをすると背が伸びる、ということでもありません。紹介した試験では、身長の伸びは筋トレをしてもしなくても同じでした。

もうひとつ、試験の多くは、指導者のいる場所で、数週間から2年ほど行われたものです。危ないのは重さそのものより、見ている人のいない場所での事故でした。

まだわかっていないこと

  • 背が最もよく伸びる時期に、重い重さでの筋トレを何年も続けた場合の、大人になったときの身長。長い期間をかけて比べた試験はない
  • 女子で同じことが言えるか。2年間の試験の参加者は男の子だった

関節の痛みが何日も続く、腫れている、といった場合は、筋トレを休んで医療機関を受診してください。

まとめと今日から試せること

成長期の筋トレで身長の伸びが変わった、という結果は、2年間の試験でも、22の試験をまとめた検討でも出ていません。体操選手が小柄なのも、練習のせいとは言えませんでした。気をつけたいのは、重りを落とす、器具に挟むといった事故のほうです。

  • 中学生・高校生の筋トレは、身長を理由にやめなくてよい
  • 部活やジムの指導者がいる場所でフォームを教わり、正しいフォームでできる重さから始める
  • 重さは、フォームが崩れない範囲で少しずつ上げる
  • 家でダンベルなどを使うときは、落とさない・挟まない置き方を決め、小学生は大人が見ているときだけにする
  • 関節の痛みや腫れが続くときは休んで受診する

参考文献

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