朝起きたら、のどが少しいがらっぽい。鼻水も出てきた。予定は脚の日。ジムに行くか迷います。寒くなってくると、そんな朝が増えます。
休まないと治りが遅くなるのか。1日休むと、せっかくの流れが途切れるのか。どちらの心配も、よく耳にします。
風邪と運動について、研究で確かめられている範囲を見ていきます。
首から上なら動いていい、という目安はどこから?
運動の現場では、症状が首から上だけなら軽く動いてよく、熱や体の痛みなど首から下にも出ていたら休む、という目安がよく語られます。
この目安の背景には、風邪のときの体の負担についての心配があります。風邪のウイルスとたたかっている最中に体を追い込むと、症状が重くなるのではないか。息苦しくて、ふだんどおりの力が出ないのではないか。
ただ、この目安そのものを比べた試験は、ここで紹介する中にはありません。では、風邪をひいた人の体は、運動のときに実際どうなっていたのでしょうか。
風邪のピークに、走る力は落ちていた?
1997年に報告されたアメリカの試験では、18〜29歳の男女45人(男性24人、女性21人)が、鼻かぜのウイルスを2日続けて鼻に入れて、わざと風邪をひいています。
ウイルスを入れる前と、2回目の翌日の症状がいちばん強い時期に、肺の働きの検査と、限界まで走る運動の検査を受けました。ウイルスを入れなかった10人も、1週間あけて同じ検査を受けています。
肺の働きも、運動中の体の反応も、限界まで走れた量も、風邪の前後で変わりませんでした。
では、風邪のあいだも運動を続けたら、症状の重さや長さは変わるのでしょうか。
風邪のあいだに運動を続けると、症状は重くなった?
1998年に、同じ研究チームが続きの試験を報告しています。18〜29歳の50人に同じ鼻かぜのウイルスを入れ、34人は10日間、1日おきに40分の運動をしました。残りの16人は運動をしていません。
運動の強さは、安静時と最大の心拍数の差の7割まで上げる程度です。著者らは、中くらいの強さと呼んでいます。
症状は12時間ごとに13項目で記録しました。使ったティッシュも集めて重さを量り、鼻水の量の目安にしています。
2〜10日目のどの時点でも、症状の点数とティッシュの重さに、2つのグループの差はありませんでした。運動の前後でも、症状は変わっていません。

この試験では、風邪のあいだに運動しても、症状が重くなることはありませんでした。では、ふだんの運動の量は、風邪のひきやすさと関係があるのでしょうか。
よく運動する人は、風邪をひく日が少なかった?
2011年に報告されたアメリカの調査では、18〜85歳の1,002人を秋から冬の12週間追い、風邪の症状が出た日を数えました。
週5日以上、有酸素運動をしていた人は、週1日以下の人より、風邪の症状が出た日が43%少なくなっていました。体力に自信がある人は、ない人より46%少なくなっていました。症状の重さも、32〜41%軽くなっていました。
ただ、この調査は、運動する人としない人を比べたものです。運動のおかげなのか、運動する人のほかの習慣のおかげなのかは、分けきれません。
2020年に、運動をする人としない人に分けて比べた試験14本(大人1,377人)をまとめた分析が出ています。運動をしても、風邪などをひく回数は減っていませんでした。1回の風邪が続く日数も同じでした。
一方で、症状の重さは軽くなり、期間中に症状があった日数は合わせて2.24日少なくなっていました。どちらも2〜4本の試験から出た結果です。分析全体の確かさは低いとされています。

取り違えやすい点
1998年の試験で症状が変わらなかったのは、若くて健康な人が、鼻かぜの状態で、中くらいの有酸素運動をした場合です。風邪のときにどんな運動をしても変わらない、という結果ではありません。
もうひとつ、2020年の分析で減っていたのは、風邪をひく回数ではありません。ひいたときのつらさと、症状のある日の合計でした。
筋トレについて、まだ確かめられていないこと
- 風邪のときの筋トレ。紹介した試験の運動は、どれも走る・歩く・自転車といった有酸素運動だった
- 熱がある、体の節々が痛む、せきが続くといった症状のときの運動。試験はどれも鼻かぜの人だった
- インフルエンザや新型コロナなど、鼻かぜ以外の感染症のとき。運動との関係は、ここで紹介した試験とは別に考える必要がある
- 持病のある人や、年齢の高い人で同じことが言えるか
熱が続く、症状が長引くなど、いつもの風邪と違うと感じるときは、運動の前に医師に相談してください。
まとめと今日から試せること
わざと鼻かぜをひいた若い人では、走る力は落ちておらず、1日おきの40分の運動で症状が重くなることもありませんでした。一方で、風邪のときの筋トレそのものは、まだ試験で確かめられていません。
ふだんの運動については、ひいたときのつらさが軽くなる傾向が見えています。
- 熱、体の節々の痛み、せきがある日は、筋トレを予定から外す
- 風邪の症状が出た日は、日付と症状を書き残しておく
- 風邪をひいていない時期に、週3回、30〜45分の早歩きや自転車を続ける(2020年の分析の試験で多かったやり方)
参考文献
- Weidner TG, Anderson BN, Kaminsky LA, Dick EC, Schurr T. Effect of a rhinovirus-caused upper respiratory illness on pulmonary function test and exercise responses. Med Sci Sports Exerc. 1997;29(5):604-609. PMID: 9140895 / DOI: 10.1097/00005768-199705000-00003
- Weidner TG, Cranston T, Schurr T, Kaminsky LA. The effect of exercise training on the severity and duration of a viral upper respiratory illness. Med Sci Sports Exerc. 1998;30(11):1578-1583. PMID: 9813869 / DOI: 10.1097/00005768-199811000-00004
- Nieman DC, Henson DA, Austin MD, Sha W. Upper respiratory tract infection is reduced in physically fit and active adults. Br J Sports Med. 2011;45(12):987-992. PMID: 21041243 / DOI: 10.1136/bjsm.2010.077875
- Grande AJ, Keogh J, Silva V, Scott AM. Exercise versus no exercise for the occurrence, severity, and duration of acute respiratory infections. Cochrane Database Syst Rev. 2020;4(4):CD010596. PMID: 32246780 / DOI: 10.1002/14651858.CD010596.pub3



