「筋肉を大きくしたいなら、8〜12回で限界になる重さを選ぶ」
筋トレを始めると、よく聞く目安です。本当でしょうか。一方で、「軽い重量でも回数を多くすれば筋肉はつく」という話も見かけます。
重いバーベルは怖い、関節が気になる、ジムが混んでいて重い器具が空いていない。そんな日に軽い重量で済ませると、筋肉の育ち方は変わるのでしょうか。
この記事では、重い重量と軽い重量を比べた研究を順に読んでいきます。見るのは、筋肉の大きさと、持ち上げられる重さ。
「筋肥大は8〜12回」はどこから来た?
筋トレの解説では、回数と目的が次のように結びつけて紹介されることがあります。
- 1〜5回で限界になる重さ:持ち上げる力をつける
- 8〜12回で限界になる重さ:筋肉を大きくする
- 15回以上できる軽い重さ:長く続ける力をつける
重さが大事だとされる理由の一つは、筋肉の使われ方です。筋肉は細い線維の束でできていて、軽いものを持つときは一部の線維だけが働きます。重いものを持つほど、働く線維が増えます。そこで「筋肉を大きくするには、重さで多くの線維を働かせる必要がある」と考えられてきました。
ただ、軽い重量でも回数を重ねると、最初に働いていた線維が疲れていきます。それを補うために、ほかの線維も働き始めます。この考え方に立つと、軽い重量でも、もう上がらないところまで続ければ、重い重量に近い数の線維を使えることになります。
実際に重さを変えて何週間か鍛えたら、筋肉の育ち方に差は出るのか。研究の結果を見ていきます。
同じ人の左右の脚で比べたら?
まずは、条件をそろえやすい小さな研究から。
2012年の研究では、筋トレの経験がない若い男性18人が、片脚ずつのひざ伸ばし(座って脚を前に伸ばす種目)を10週間、週3回行いました。左右の脚には、次の3つから2つの条件を割り当てています。どの条件も、もう上がらないところ(限界)までくり返しました。
- 1回だけ持ち上げられる最大の重さ(1RM)の30%で3セット
- 1RMの80%で1セット
- 1RMの80%で3セット
太ももの前側の筋肉をMRIで測ると、体積は次のように増えていました。
- 30%×3セット:6.8%
- 80%×1セット:3.2%
- 80%×3セット:7.2%

重さとセット数を変えた3つの条件で、太ももの前の筋肉の体積が増えた割合(Logrit編集部作成。数値はMitchellほか(2012)の論文から引用)
3つの条件の間に、統計的な差(偶然だけでは説明しにくい差)はありませんでした。軽い30%の条件と、重い80%の3セットの条件は、ほぼ同じです。80%で1セットの条件は数字の上では小さめでしたが、差があるとまでは言えない結果でした。
1RMは違いました。80%の2つの条件は、30%の条件より大きく伸びています。
この研究は、筋トレ未経験の人が、ひざ伸ばしという1種目だけを行ったものです。筋トレに慣れた人が全身を鍛えた場合はどうだったか。次の研究で確かめます。
筋トレに慣れた人が全身を鍛えたら?
2016年の研究では、筋トレの経験がある男性49人(平均23歳)が、全身の筋トレを12週間、週4日行いました。各種目3セットで、どのセットも限界まで続けています。参加者は2つのグループに分けられました。
- 軽めのグループ:1RMの約30〜50%で、20〜25回
- 重めのグループ:1RMの約75〜90%で、8〜12回
12週間後、脂肪と骨を除いた体重と、筋肉の線維の太さは、どちらのグループも増えました。差はなし。
1RMは、どの種目でも両方のグループで伸びました。差が出たのはベンチプレスだけで、軽めのグループは9kg、重めのグループは14kgの伸びでした。

12週間でのベンチプレスの1RMの伸び(Logrit編集部作成。数値はMortonほか(2016)の論文から引用)
ここまでの2つは、それぞれ一つの研究の結果です。ほかの研究も合わせると、同じことが言えるのでしょうか。
研究をまとめると、どうなる?
2017年に出た分析は、重い重量と軽い重量を比べた21の研究をまとめています。対象にしたのは、どのセットも限界まで行い、6週間以上続けた研究です。ここでは、1RMの60%以下を軽い重量、60%より上を重い重量としています。
結果は2つに分かれました。
- 筋肉の大きさの変化:両方の条件で同じくらい
- 1RMの伸び:重い重量のほうが大きい
著者らは、最大の筋力を伸ばすには重い重量が有利で、筋肉の大きさは幅広い重さで同じように得られる、とまとめています。
2021年に出た分析は、重さを3つに分けて28の研究をまとめました。参加者は健康な成人747人です。この分析も、限界まで行った研究だけを集めています。
- 軽い:15回より多くできる重さ
- 中くらい:9〜15回で限界になる重さ
- 重い:8回以下で限界になる重さ
筋肉の大きさの変化は、3つの重さの間で差がありませんでした。質の高い研究だけに絞っても同じでした。
1RMの伸びは、重い重量と中くらいの重量が、軽い重量より大きくなりました。重いと中くらいの間には、はっきりした差は出ていません。

筋肉の大きさと1RMで、重さの影響の出方が違う(Logrit編集部作成の概念図。Schoenfeldほか(2017)、Lopezほか(2021)の結論から)
ここまでの研究では、筋肉の大きさは重さで差が出にくく、1RMは重いほうが伸びやすい、という形がくり返し出てきました。
ここで、2016年の研究の「重め」の条件をもう一度見てみます。
意外な点:「8〜12回」は比べる側にいた
2016年の研究で「重め」とされたのは、8〜12回で限界になる重さでした。筋肉を大きくする目安として、よく勧められる範囲です。この研究では、20〜25回の軽めのグループも、筋肉の増え方は同じくらいでした。
8〜12回が無意味、という話ではありません。8〜12回でも、20〜25回でも、限界まで続けた条件では筋肉の増え方が似ていた、という結果です。
もう一つ、同じ研究では、運動の直後にホルモンがどれだけ上がったかも測っています。ホルモンの上がり方は、筋肉や筋力の伸びと関係していませんでした。「重い重量でホルモンが出るから筋肉がつく」という説明は、この研究の結果とは合いません。
ここまでの研究は、どれも限界までくり返す条件でした。限界の手前で止めた場合を比べた分析もあります。
ここまでの研究から言えないこと
2023年に出た分析は、限界まで行う場合と、その手前で止める場合を比べた15の研究をまとめています。
「もう1回も上がらない」ところまで行った場合と、その手前で止めた場合で、筋肉の大きさの変化に差はありませんでした。限界の決め方を広く取ると、限界まで行うほうがごくわずかに有利という結果も出ましたが、その差は小さいものでした。著者らは、限界まで行うほうが筋肉の成長に有利だという根拠はない、とまとめています。
ただし、この分析は軽い重量だけを調べたものではありません。著者らは、限界まで行うなら、軽い重量を使うときがその候補の一つになると述べています。軽い重量で、限界のかなり手前で止めた場合も同じように筋肉が育つかは、ここで紹介した研究からは分かりません。
ほかにも、次のような限界があります。
- 重さを比べた研究の多くは、どのセットも限界まで行う条件で行われた
- 参加者は若い男性が中心。2021年の分析では平均23.4歳で、28研究のうち19研究が男性を対象にしていた
- 筋トレの経験がない人の研究が多い(28研究のうち21研究)。競技選手ほど強く鍛えた人の研究はなかった
- 期間は6〜12週間ほどが多く、何年も続けた場合は分からない
- 女性や高齢の人、持病のある人に、そのまま当てはまるとは限らない
- 軽い重量で限界まで行うと、回数が多くなって時間がかかり、きつさも強く感じやすい(2021年の分析の著者らの指摘)
まとめと、今日からできること
ここまでの研究から言えそうなことは、次のとおりです。
- 限界までくり返す条件では、軽い重量でも重い重量でも、筋肉の大きくなり方に大きな差は見られなかった
- 1RM(1回だけ持ち上げられる最大の重さ)を伸ばすには、重い重量のほうが有利だった
- 8〜12回で限界になる重さでも、ほかの重さと同じように筋肉は大きくなっていた
- 限界まで追い込むことが必要かどうかは、まだはっきりしない。軽い重量で手前で止めた場合は、研究が少ない
軽い重量でも、もう上がらないところまでくり返した研究では、重い重量と同じくらい筋肉が育っていました。ただし、これは主に若い男性で、限界まで行った研究の結果です。持ち上げられる重さを伸ばしたいなら、重い重量を含めるのが研究に合っています。8〜12回の重さをやめる理由にはなりません。
試すときは、次の順で考えてみてください。
- 目的を決める。筋肉を大きくしたいのか、持ち上げられる重さを伸ばしたいのか
- 筋肉を大きくしたいなら、重さは扱いやすい範囲で選んでよい。重い器具が空いていない日や、重い重量に不安がある日は、軽めで回数を多くするのも一つの方法
- 軽めの重さを使うときは、楽に止められる回数で終わらせず、もう上がらないところの近くまで続ける。研究の多くは、限界まで行う条件で行われている
- 持ち上げられる重さを伸ばしたいなら、重い重量(8回以下で限界になる重さ)を練習に入れる
- 重さ、回数、セット数を記録して、数週間ごとに変化を確かめる
関節や腰に痛みがある人、持病のある人、筋トレを始めたばかりで重い重量に不安がある人は、無理に限界まで続けず、指導者や医師に相談してください。
参考文献
- Schoenfeld BJ, Grgic J, Ogborn D, Krieger JW. Strength and hypertrophy adaptations between low- vs. high-load resistance training: a systematic review and meta-analysis. J Strength Cond Res. 2017;31(12):3508-3523. PMID: 28834797 / DOI: 10.1519/JSC.0000000000002200
- Lopez P, Radaelli R, Taaffe DR, et al. Resistance training load effects on muscle hypertrophy and strength gain: systematic review and network meta-analysis. Med Sci Sports Exerc. 2021;53(6):1206-1216. PMID: 33433148 / DOI: 10.1249/MSS.0000000000002585(訂正:Med Sci Sports Exerc. 2022;54(2):370. PMID: 35029596 / DOI: 10.1249/MSS.0000000000002838。筋力の図の一部の数値を直したもので、主な結果と結論は変わらないとされています)
- Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, et al. Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. J Appl Physiol. 2016;121(1):129-138. PMID: 27174923 / DOI: 10.1152/japplphysiol.00154.2016
- Mitchell CJ, Churchward-Venne TA, West DW, et al. Resistance exercise load does not determine training-mediated hypertrophic gains in young men. J Appl Physiol. 2012;113(1):71-77. PMID: 22518835 / DOI: 10.1152/japplphysiol.00307.2012
- Refalo MC, Helms ER, Trexler ET, Hamilton DL, Fyfe JJ. Influence of resistance training proximity-to-failure on skeletal muscle hypertrophy: a systematic review with meta-analysis. Sports Med. 2023;53(3):649-665. PMID: 36334240 / DOI: 10.1007/s40279-022-01784-y
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。けがや持病のある人、運動中に痛みや体調の変化が出る人は、医師に相談してください。