「朝トレに切り替えたら、一日をすっきり過ごせる」

「夜のほうが重いものを挙げられる」

筋トレをする時間帯の話は、Xでも毎日のように見かけます。とはいえ、仕事や家のことがあると、選べる時間は限られます。朝しか空いていない人もいれば、夜しかジムに行けない人もいるでしょう。

気になるのは、時間帯で筋肉のつき方や筋力の伸びが変わるのかどうかです。夜に筋トレをすると眠れなくなる、という話もよく聞きます。

この記事では、朝と夕方に分かれて筋トレを続けた研究と、それらをまとめた分析、夜の運動と睡眠の研究を順に読み、時間帯で何が変わり、何が変わらないのかを確かめます。なお、時間帯がわかる筋トレの研究で朝と比べているのは、16〜19時ごろの夕方です。

ここで紹介する研究の多くは、持病のない若い成人を調べたものです。持病のある人や治療中の人、睡眠に悩みがある人は、記事の最後にある注意もあわせて読んでください。

「夜のほうが強い」と言われるのはなぜ?

短い時間で全力を出す運動には、ダッシュやジャンプ、筋肉に力を込めて測る筋力テストなどがあります。こうした運動を時間帯で比べた研究を整理した2020年の総説によると、成績がもっとも高くなるのは16時から20時ごろだとする研究が多いそうです。理由として挙げられているのは、体温、ホルモン、やる気や気分、それに筋肉そのものが持つ1日のリズムです。

あとで紹介する2019年の分析でも、トレーニングを始める前の時点では、朝より夕方のほうが筋力は高く出ていました。

その日に出せる力が夕方に高いなら、夕方に鍛え続けた人のほうが、筋肉も筋力も伸びるのでしょうか。朝と夕方に分かれて、同じ内容の筋トレを続けた研究があります。

朝と夕方に分かれて10週間続けると?

フィンランドの大学の研究です。男性の参加者は、まず10週間、夕方の17〜19時に筋トレをしました。そのあと朝7〜9時のグループと、夕方17〜19時のグループに分かれ、さらに10週間続けています。

太ももの前の筋肉をMRIで測ると、どちらのグループでも大きくなっていました。断面積と体積の増え方は次のとおりです。

  • 朝のグループ:2.7%

  • 夕方のグループ:3.5%

    0.8ポイントの差は、統計的な差(偶然だけでは説明しにくい差)ではありませんでした。ひざを伸ばす力とハーフスクワットの1RM(1回だけ挙げられる最大の重さ)も、2つのグループで同じくらい伸びています。論文では、3か月より短い期間なら、筋肥大をねらう筋トレは朝でも夕方でも同じくらいの効果が見込めるとしています。

この研究の参加者は、最初の10週間を夕方に鍛えていました。筋トレを初めてする人が、最初から朝と夕方に分かれていたら、結果は違ったのでしょうか。

筋トレが初めての人ではどうだった?

2018年の研究は、筋トレの経験がない20代の男性25人を3つに分けました。7時30分〜8時30分に鍛える朝のグループ(11人)、16〜17時に鍛える午後のグループ(7人)、鍛えないグループ(7人)です。鍛える2つのグループは、11週間で22回、筋肉を大きくすることをねらったトレーニングをしました。

筋力は、それぞれが鍛えていた時間帯に測っています。11週間での増え方は以下のとおりです。

  • 筋力(ひざを伸ばす力):朝16.9%、午後15.2%増えた
  • 太ももの前の筋肉の大きさ(MRI):朝8.8%、午後11.9%増えた
  • 筋肉の線維1本あたりの太さ:朝21%、午後18%増えた

鍛えないグループでは、どれも変わっていませんでした。研究チームは、筋トレの経験がない男性では、時間帯にかかわらず同じくらいの筋力と筋肥大が得られたとまとめています。筋肉の中で働く一部のたんぱく質の反応には時間帯による違いが見られましたが、筋肉の大きさの変化とは結びついていませんでした。

朝と夕方に分かれて筋トレを続けた2つの研究の棒グラフ。2009年の研究の太ももの筋肉の大きさは朝2.7%、夕方3.5%増。2018年の研究の太ももの筋肉の大きさは朝8.8%、午後11.9%増、ひざを伸ばす力は朝16.9%、午後15.2%増。どの比較でも差は統計的な差ではなかった

朝と夕方に分かれて筋トレを続けた2つの研究(Logrit編集部作成。数値はSedliakほか(2009)、Sedliakほか(2018)の論文の要旨から引用)

24週間続けたら、差は出た?

2009年の研究と同じフィンランドの大学の研究グループが、若い男性42人に24週間のトレーニングをしてもらった研究があります。この研究では、筋トレと持久系のトレーニングを同じ日に続けて行いました。朝に行うグループと夕方に行うグループがあり、それぞれ筋トレを先にするか後にするかでも分かれています。

レッグプレスの1RMは、どのグループも同じくらい伸びました。朝に測ると14〜19%、夕方に測ると18〜24%の伸びです。太ももの筋肉の断面積も、24週間でどのグループも12〜20%増えています。

違いが見えたのは後半です。13〜24週目には、夕方のグループのほうが筋肉が多く増えていました。著者らは、夕方のトレーニングで筋肉がより増える可能性があるとしています。そのうえで、時間帯や順番による差が出たのは、期間が12週間を超えてからだったと書いています。

注意したいのは、この研究が筋トレだけでなく、持久系のトレーニングも組み合わせていた点です。筋トレだけを24週間続けても同じ結果になるかは、この研究からはわかりません。

研究をまとめると、時間帯の差はあった?

2019年に、朝と夕方の筋トレを比べた研究をまとめた分析が出ています。対象は、頻度や量などの条件をそろえ、時間帯だけを変えた11の研究です。主な結果を挙げます。

  • 鍛える前は、朝より夕方のほうが筋力が高かった
  • 朝に鍛え続けた人は、朝に測った筋力が、夕方に測った筋力と同じくらいまで上がることがあった
  • 夕方に鍛えた人では、夕方のほうが強いという差がそのまま残った
  • 2つのグループの筋力の伸びは同じくらいだった。朝に測っても、夕方に測っても同じだった
  • 筋肉の大きさの増え方も、時間帯にかかわらず同じくらいだった

2023年には、筋トレと持久系のトレーニングの両方を対象にした分析も出ています。1万4千件あまりの論文から26本を選び、そのうち7本の結果を合わせて計算しました。結論は、特定の時間帯に鍛えたほうが体力や健康の指標がよく伸びるとも、伸びないとも、いまの研究からは言えないというものです。多くの研究で、結果がゆがんでいるおそれが高いとも評価されています。

ひとつだけ見えた傾向もあります。鍛える時間と測る時間が同じだと、とくに体力の指標で効果が大きく出やすかったのです。

時間帯を比べた研究でわかったことの表。鍛える前は夕方のほうが筋力が高い、朝に鍛え続けると朝の筋力が夕方と同じくらいまで上がることがある、筋力と筋肉の伸びは時間帯にかかわらず同じくらい、持久系と組み合わせた24週間の研究では後半に夕方のほうが筋肉が多く増えた、鍛える時間と測る時間が同じだと効果が大きく出やすい

朝と夕方の筋トレを比べた研究で、わかったこととわからないこと(Logrit編集部作成。Grgicほか(2019)、Bruggisserほか(2023)、Küüsmaaほか(2016)の論文の要旨から)

筋肉や筋力の伸びに大きな差がないなら、残る心配は睡眠です。夜に筋トレをすると、眠りは悪くなるのでしょうか。

夜に運動すると眠れなくなる?

2019年の分析は、健康な成人が夜に1回運動した日と、運動しなかった日の睡眠を比べた23の研究をまとめました。調べた運動は、筋トレに限りません。

夜に運動した日は、深い眠りの割合がわずかに増えていました(1.3ポイント)。著者らは、夜の運動が睡眠に悪いという考えは支持されず、むしろ逆の結果だったと結論づけています。ただし、寝る前1時間以内に激しい運動を終えた場合は、寝つくまでの時間や眠った時間などが悪くなるかもしれないとも書いています。

2021年には、寝る前の強い運動に絞った分析も出ました。対象は、もともとよく眠れている18〜50歳の人で、15の研究の194人分を合わせています。寝る0.5〜4時間前に強い運動を終えた日は、運動しなかった日と比べて、レム睡眠(夢を見ることが多い眠り)の割合がわずかに減っていました。ほかの睡眠の指標には差がなく、夜の強い運動を習慣にした場合も睡眠は乱れていませんでした。著者らは、寝る2〜4時間前の強い運動は、健康な若い人や中年の人の睡眠を乱さないとまとめています。

寝る前の時間を示す横線の図。寝る2〜4時間前に終えた強い運動では睡眠は乱れなかった(2021年の分析)。寝る前1時間以内に終えた激しい運動は寝つきなどに響くかもしれない(2019年の分析)

夜の運動と睡眠の研究(Logrit編集部作成。Stutzほか(2019)、Frimpongほか(2021)の論文の要旨から)

意外な点:朝と夕方の筋力の差は、朝に鍛え続けると縮まる

朝は力が出にくいから、朝トレは損だと考える人もいるかもしれません。ところが2019年の分析では、朝に鍛え続けた人の朝の筋力が、夕方と同じくらいまで上がることがありました。体は、鍛える時間帯に合わせて変わっていくようです。

裏を返すと、夕方や夜にだけ鍛えている人が、朝の試合や測定でいつもの力を出せるとは限りません。2023年の分析でも、鍛える時間と測る時間が同じときに、効果が大きく出やすい傾向がありました。

もうひとつ読み違えやすいのが、「差がなかった」の意味です。これは、朝も夕方も筋肉や筋力が伸びたうえで、伸び方に統計的な差が見つからなかったという意味です。どの時間帯でもまったく同じだと確かめられたわけではありません。24週間の研究では、後半に夕方のグループのほうが筋肉が多く増えていました。

この研究から言えないこと

ここで紹介した研究には、次のような限界があります。

  • 筋肉や筋力を調べた3つの研究は、どれも男性が対象。女性や中高年、筋トレ歴の長い人に同じ結果が当てはまるかはわからない
  • 期間は10〜24週間。数年続けたときの差はわからない
  • 24週間の研究で夕方のほうが筋肉が増えたのは、持久系のトレーニングを組み合わせた条件。筋トレだけで同じになるかはわからない
  • 時間帯がわかる2つの研究は、朝7〜9時ごろと夕方16〜19時ごろを比べている。早朝や、21時以降のような遅い時間のトレーニングは、これらの研究では比べられていない
  • 2023年の分析は、多くの研究で結果がゆがんでいるおそれが高いと評価している
  • 睡眠の研究は、健康でよく眠れている人が対象で、筋トレだけを調べた分析でもない。不眠に悩む人や、夜勤などで寝る時間が不規則な人に当てはまるとは限らない
  • 朝食をとったかどうかなど、食事の条件による違いはここでは比べていない

Logritの結論

いまある研究からは、朝と夕方のどちらかが筋肥大や筋力アップにはっきり有利だとは言えません。差が出るとしても長く続けた場合で、大きな差ではなさそうです。時間帯にこだわるより、続けやすい時間帯を決めて、トレーニングの量を落とさずに続けるほうが、研究の結果に合っています。

今日から試せること

最初に確かめてほしい条件があります。次にあてはまる人は、トレーニングの時間帯や内容を変える前に医師に相談してください。

  • 持病のある人、病気の治療中の人
  • 血圧が高いと言われている人
  • 不眠など、睡眠に悩みがある人

そのうえで、次の順で考えてみてください。

  1. まず、無理なく続けられる時間帯を選ぶ。研究では、朝でも夕方でも筋肉と筋力は伸びていた
  2. 鍛える時間帯は、できるだけそろえる。鍛える時間と測る時間が同じときに、効果が出やすい傾向があった
  3. 朝に鍛える日は、ウォーミングアップを長めにとる。2020年の総説は、体を動かすウォーミングアップを、時間帯による差を小さくする要因のひとつに挙げている
  4. 朝の重量が夜より上がらなくても、朝の記録は朝の記録どうしで比べる
  5. 夜に鍛える日は、激しいメニューを寝る1時間前までに終える。できれば寝る2時間以上前に終える
  6. 大会や測定の時間が決まっている人は、その時間帯に練習する日もつくる

参考文献

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※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療上の助言ではありません。診断や治療の代わりにはなりません。持病のある人や治療中の人、運動中に胸の痛み・息苦しさ・めまいなどが出る人は、医師に相談してください。