スクワットは、どこまでしゃがめばいいのか。ジムでは、太ももが床と平行になるまでと言う人もいれば、浅くして重さを上げたほうがいいと言う人もいます。
浅く動かせば、そのぶん重いものを扱えます。深く動かせば、重さは下がります。筋肉をつけたい人にとって、どちらを選ぶかは毎回の迷いどころです。
浅く重くか、深く軽くか
関節を動かす幅のことを、トレーニングでは可動域と呼びます。
幅を狭くすると、扱える重さが増えます。重いほど筋肉への負荷は大きくなるので、浅いほうが効くという考え方があります。一方で、幅を広くすると筋肉が伸びた状態まで使うことになり、そちらに意味があるという見方もあります。
では、2つのやり方を同じ期間続けて比べると、筋肉の量に差は出たのでしょうか。
スクワットの深さで比べた、東京大学の研究
2019年に、東京大学の研究チームがスクワットの深さを比べています。対象は男性17人。深くしゃがむグループ8人と、浅くしゃがむグループ9人に分け、週2回を10週間続けました。筋肉の量はMRIで測っています。
太ももの前の筋肉は、どちらも5%ほど増えました。こちらに差は出ていません。違いが出たのは、お尻の筋肉と内ももの筋肉です。お尻の筋肉は、深いグループで6.7%、浅いグループで2.2%増えていました。内ももは6.2%と2.7%です。

差は小さくありません。ただ、人数の少ない1つの研究です。研究を広く集めても、同じ傾向は見えるのでしょうか。
ほかの研究でも、同じ傾向は出たのか
2021年に、スペインのムルシア大学などのチームが、可動域を比べた16の研究をまとめています。
広い可動域で続けたほうが、筋力の伸びが大きく、脚の筋肉もより大きくなっていました。ただし、筋肉の厚さや筋線維の角度・長さといった、筋肉のつくりの変化では、はっきりした差は出ていませんでした。
ここまでは、深く大きく動かすほうに分がある結果です。では、効いていたのは「動かす幅の広さ」そのものなのでしょうか。
同じ幅でも、筋肉が伸びる姿勢で差が出た
立命館大学の研究チームは、動かす幅は変えずに、筋肉が伸びた状態で使うかどうかを比べています。
2021年の研究では、20人が片脚を座ってのレッグカール、もう片脚をうつぶせでのレッグカールで、12週間続けました。座る姿勢では、太ももの裏の筋肉が伸びた状態になります。太ももの裏全体の筋肉の量は、座った脚で14%、うつぶせの脚で9%増えていました。
2023年の研究では、21人がケーブルで腕を伸ばす種目を、片腕は頭の上で、もう片腕は体の横で行いました。12週間後、二の腕の裏全体の筋肉の量は、頭の上で行った腕で19.9%、体の横で13.9%増えています。

扱う重さは、軽かった
この研究では、頭の上で行った腕のほうが、扱った重さは34〜39%軽くなっていました。それでも、筋肉の量はより大きく増えています。
重いものを持つほど筋肉がつく、という考え方だけでは説明しきれない結果です。浅く動かして重さを上げても、それがそのまま筋肉の増え方につながるとは限りません。
まだわかっていないこと
- 紹介した3つの研究は、どれも人数が20人前後と少なく、期間も10〜12週間ほど
- 長くトレーニングを続けている人でも同じ差が出るかは、これらの研究からはわからない
- 太ももの前の筋肉のように、深さで差が出なかった部位もある。どの種目、どの筋肉でも同じとは言えない
- 浅い可動域にも、重さに慣れる、苦手な位置を集中して練習するといった使い方がある。今回の研究は、筋肉の量と筋力を比べたもの
膝や腰、肩に痛みや持病がある人は、動かす幅を広げる前に、医師や専門家に相談してください。
まとめと今日から試せること
深くしゃがんだグループでお尻と内ももが大きく増え、16の研究をまとめた分析でも広い可動域のほうが脚の筋肉が太くなっていました。同じ幅でも、筋肉が伸びた姿勢で行うと増え方が大きく、そのとき扱った重さは軽めでした。
- スクワットは、重さを少し下げてでも、太ももが床と平行かそれより深くまでしゃがむ
- 太ももの裏を鍛えるレッグカールは、マシンがあれば座るタイプを選ぶ
- 二の腕の裏を鍛える種目に、頭の上で腕を伸ばすやり方を1種目入れる
参考文献
- Kubo K, Ikebukuro T, Yata H. Effects of squat training with different depths on lower limb muscle volumes. Eur J Appl Physiol. 2019;119(9):1933-1942. PMID: 31230110 / DOI: 10.1007/s00421-019-04181-y
- Pallarés JG, Hernández-Belmonte A, Martínez-Cava A, Vetrovsky T, Steffl M, Courel-Ibáñez J. Effects of range of motion on resistance training adaptations: a systematic review and meta-analysis. Scand J Med Sci Sports. 2021;31(10):1866-1881. PMID: 34170576 / DOI: 10.1111/sms.14006
- Maeo S, Huang M, Wu Y, Sakurai H, Kusagawa Y, Sugiyama T, Kanehisa H, Isaka T. Greater hamstrings muscle hypertrophy but similar damage protection after training at long versus short muscle lengths. Med Sci Sports Exerc. 2021;53(4):825-837. PMID: 33009197 / DOI: 10.1249/MSS.0000000000002523
- Maeo S, Wu Y, Huang M, Sakurai H, Kusagawa Y, Sugiyama T, Kanehisa H, Isaka T. Triceps brachii hypertrophy is substantially greater after elbow extension training performed in the overhead versus neutral arm position. Eur J Sport Sci. 2023;23(7):1240-1250. PMID: 35819335 / DOI: 10.1080/17461391.2022.2100279



