ベンチプレスの最後のセット。もう上がらないところまで粘って、補助の手を借りてようやくラックに戻す。ここまでやらないと意味がない、と考えている人は多いでしょう。

反対に、あと1〜2回できそうなところで止めると、手を抜いたようで落ち着かない。毎回つぶれるまで続けるのがつらくて、ジムに行く足が重くなる人もいます。

筋肉を増やすには、毎セット限界まで追い込む必要があるのでしょうか。研究で確かめられている範囲を見ていきます。

「限界」と「あと何回」の決め方

研究でいう限界は、正しいフォームでもう1回も上げられなくなったところです。ここで止めるやり方を、限界まで行うトレーニングと呼びます。

手前で止めるときは、「あと何回できたか」で深さを表します。あと2回できるところで止めたなら、余力2回。動きの速さを測り、1回目より何%遅くなったら止める、と決める研究もあります。

では、限界まで行った場合と手前で止めた場合で、筋肉の増え方は違ったのでしょうか。

余力を残した脚は、増え方で負けたのか

2024年に報告されたオーストラリアの試験では、筋トレの経験がある男性12人と女性6人が、8週間、週2回のトレーニングを行いました。種目はレッグプレスとレッグエクステンション(座って脚を前に伸ばす種目)です。

同じ人の左右の脚に、2つの条件を割り当てています。片方の脚は、どのセットも限界まで行いました。もう片方の脚は、レッグプレスで余力2回、レッグエクステンションで余力1回を残して止めています。

8週間後、太ももの前の筋肉の厚みは、限界まで行った脚で0.181cm、余力を残した脚で0.182cm増えていました。差は0.001cm。こなした重さと回数の合計も、2つの条件でほぼ同じでした。

違いが出たのは、その日の疲れです。限界まで行った脚のほうが、セットを重ねたときの回数の落ち方も、動きの遅くなり方も大きくなりました。

腕で試しても同じだったのか

2026年に報告されたポルトガルの試験も、同じように左右で条件を分けています。筋トレの経験がある19人が、片腕ずつのアームカールを、1RM(1回だけ上げられる重さ)の70〜80%の重さで、週2回、8週間行いました。

限界まで続けたのは片腕だけで、反対の腕は余力1〜3回で終えています。

どちらの腕も、筋肉の厚みと1RMが増えました。条件の差は、厚みで0.032cm、1RMで0.588kg。どちらの条件が上とも言えない小さな差で、男女別に分けても同じ傾向でした。

筋トレ経験者が左右で止め方を変えて8週間続けた2つの試験。脚では太ももの前の筋肉の厚みが限界まで行った側で0.181cm、余力1〜2回を残した側で0.182cm増えた。腕では両側とも厚みと1RMが増え、差は厚み0.032cm、1RM0.588kgで、どちらが上かはっきりしなかった

では、たくさんの研究をまとめても、限界までの近さは関係ないのでしょうか。

限界に近いほど筋肉は増えやすい、という分析もある

2024年に出た分析は、限界までの近さを調べた研究を集め、それぞれのトレーニングが「余力何回」で終わっていたかを見積もって比べています。重さや期間、筋トレの経験の有無の影響も差し引いています。

筋力の伸びは、余力の回数とほとんど関係がありませんでした。

筋肉の大きさは違います。限界に近いところで止めた研究ほど、筋肉の増え方が大きくなっていました。

ただし、余力の回数は、論文に書かれた内容から分析した人が見積もったものです。著者らも、正確な関係はまだわからず、結果は慎重に扱うべきだと書いています。

この分析で比べているのは、余力が多い止め方と少ない止め方です。余力1〜2回と限界のように、どちらも限界に近い条件どうしの差を見たのが、左右で比べた2つの試験です。

速さが20%落ちたら止めるか、40%まで続けるか

2017年に報告されたスペインの試験では、若い男性22人が、8週間スクワットを行いました。動きの速さを毎回測り、12人は1回目より20%遅くなったところで、10人は40%遅くなったところでセットを終えています。

20%で止めたグループがこなした回数は、40%まで続けたグループより40%少なくなりました。それでも、スクワットで上げられる重さの伸び幅は同じくらいでした。垂直跳びの高さは、20%で止めたグループが9.5%、40%まで続けたグループが3.5%伸びています。

筋肉の大きさは、どちらのグループも増えました。太ももの前の筋肉のうち外側と中間の部分は、40%まで続けたグループのほうが大きく増えていました。また40%まで続けたグループでは、すばやく大きな力を出す筋線維の割合が減っていました。

スクワットで、速さが20%落ちたら止めるグループと40%落ちるまで続けるグループの比較。20%のグループは回数が40%少なく、上げられる重さの伸びは同じくらい、垂直跳びは9.5%と3.5%。太ももの外側と中間の筋肉は40%のグループのほうが大きく増えた

限界まで行った疲れは、いつまで残るのか

2017年に報告された別のスペインの試験は、疲れが何日目まで残るかを調べています。

筋トレの経験がある男性10人が、10回が限界の重さを使って、ベンチプレスとスクワットを3通りのやり方で行いました。

  • 5回を3セット(限界の半分で止める)
  • 5回を6セット(限界の半分で止め、合計の回数を下の条件とそろえる)
  • 10回を3セット(毎セット限界まで)

運動の前から72時間後まで、跳ぶ高さやバーを動かす速さ、血液中の疲れや筋肉の傷みの指標を測っています。

毎セット限界まで行ったときは、合計の回数が同じ5回×6セットと比べても、運動の直後に跳ぶ高さとバーの速さが大きく落ちました。5回で止めた2つのやり方は、24〜48時間後にかけて、限界まで行ったときより早く元に戻っています。

5回×3セット、5回×6セット、10回×3セット(毎セット限界まで)の比較。限界まで行うと運動の直後に跳ぶ高さとバーの速さが大きく落ち、24〜48時間後にかけて戻るのも遅かった

著者らは、限界まで行うと、次の練習や試合に向けて体が戻るまでの時間が長くなるとまとめています。

取り違えやすい点

ひとつめは、手前で止めるといっても、どこで止めてもよいわけではないことです。差が出なかった試験の止め方は、あと1〜3回まで。もっと手前で止めた場合は、2024年の分析で、筋肉の増え方が小さくなる傾向が見られています。

ふたつめは、限界まで行うと筋肉が増えにくい、という話でもないことです。限界まで続けた脚や腕も、筋肉の厚みはきちんと増えていました。

みっつめは、「あと何回」が本人の見積もりだということです。2024年のオーストラリアの試験も、余力は本人の感覚で決めていました。

まだわかっていないこと

  • 筋トレを始めたばかりの人や、年齢の高い人で同じことが言えるか。紹介した試験の参加者は、主に筋トレ経験のある若い人だった
  • 8週間より長く続けた場合や、ベンチプレスやスクワットのようなバーベルを使う種目で、限界まで行う場合と余力を残す場合を比べた結果。左右で比べた2つの試験は、マシンを使う脚の種目と腕のアームカールで、期間はどちらも8週間だった

痛みがある日や、けがの治療中の場合は、紹介した試験では調べられていません。重さを決める前に、医師や理学療法士に相談してください。

まとめと今日から試せること

あと1〜3回を残して止めた側も、限界まで続けた側とほぼ同じだけ筋肉の厚みが増えました。ただ、手前すぎる止め方では、増え方が落ちる傾向があります。そして限界まで行った日は、体が戻るのに時間がかかりました。

少なくとも筋トレに慣れた人の8週間では、毎セット限界まで行わなくても、筋肉はほぼ同じように増えていました。

  • 筋肉を大きくしたい種目は、あと1〜2回できるところでセットを終える
  • セットごとに「あと何回できたか」を重量と回数と一緒に書き留め、同じ重量で回数が伸びているかを数週間ごとに比べる
  • 翌日も同じ種目を行う予定があるときは、スクワットやベンチプレスを、10回できる重さなら5回前後で止め、疲れを持ち越さない日にする
  • スクワットで跳ぶ力も伸ばしたいなら、バーの上がる速さが目に見えて落ちてきたところで、そのセットを終える
  • ベンチプレスやスクワットで限界近くまで行うセットは、補助の人をつけるか、セーフティバーのある台で行う

参考文献

  1. Refalo MC, Helms ER, Robinson ZP, Hamilton DL, Fyfe JJ. Similar muscle hypertrophy following eight weeks of resistance training to momentary muscular failure or with repetitions-in-reserve in resistance-trained individuals. J Sports Sci. 2024;42(1):85-101. PMID: 38393985 / DOI: 10.1080/02640414.2024.2321021
  2. Vasconcelos T, Alves AR, Refalo MC, et al. Elbow flexor adaptations to failure versus repetitions-in-reserve training: a unilateral within-participant study in resistance-trained adults. Muscles. 2026;5(3):61. PMID: 42784046 / DOI: 10.3390/muscles5030061
  3. Robinson ZP, Pelland JC, Remmert JF, et al. Exploring the dose-response relationship between estimated resistance training proximity to failure, strength gain, and muscle hypertrophy: a series of meta-regressions. Sports Med. 2024;54(9):2209-2231. PMID: 38970765 / DOI: 10.1007/s40279-024-02069-2
  4. Pareja-Blanco F, Rodríguez-Rosell D, Sánchez-Medina L, et al. Effects of velocity loss during resistance training on athletic performance, strength gains and muscle adaptations. Scand J Med Sci Sports. 2017;27(7):724-735. PMID: 27038416 / DOI: 10.1111/sms.12678
  5. Morán-Navarro R, Pérez CE, Mora-Rodríguez R, et al. Time course of recovery following resistance training leading or not to failure. Eur J Appl Physiol. 2017;117(12):2387-2399. PMID: 28965198 / DOI: 10.1007/s00421-017-3725-7