1セット終えて、ベンチに座ってタイマーを見る。次のセットまで1分で戻るか、3分待つか。毎回の小さな迷いどころ。

筋肥大が目的なら休憩は短く、筋力を上げたいなら長く、と教わった人も多いでしょう。一方で、休憩を1分に縮めるのは損だという話も、最近はよく見かけます。

休憩の長さで、筋肉のつき方や筋力の伸びはどれくらい変わるのでしょうか。

なぜ「筋肥大なら短い休憩」と言われてきたのか

2024年の分析の著者らによると、アメリカの筋力トレーニングの専門団体(NSCA)は、筋肥大を目的にするなら30〜90秒の短めの休憩を勧めてきました。根拠のひとつは、休憩を短くすると、運動のあとに血液中のホルモンが多く出るという短期の研究です。ホルモンが多ければ筋肉も大きくなる、という考え方です。

ただ、休憩を短くすると、次のセットは前のセットほど回数をこなせません。同じ回数をこなすには、重量を下げることになります。

ホルモンは増える。持ち上げる量は減る。筋肉を作る反応は、どちらに引っぱられるのでしょうか。

1分と5分で、筋肉を作る反応はどう違った?

2016年のイギリスの研究は、若い男性16人を8人ずつに分けて、レッグプレスとレッグエクステンションを4セットずつ行ってもらいました。重量は1回だけ持ち上げられる最大重量の75%で、毎セットこれ以上できなくなるまで続け、運動のあとにホエイプロテインを25g飲んでいます。違いはセット間の休憩だけで、片方は1分、もう片方は5分でした。

運動の20〜40分後、血液中のテストステロンは1分休憩のグループのほうが高くなっていました。それなのに、運動後4時間までの筋肉のたんぱく質を作る速さは、5分休憩のグループで安静時より152%上がり、1分休憩のグループの76%を大きく上回りました。

休憩1分と5分で比べた研究。運動後4時間までの筋肉のたんぱく質を作る速さは、安静時と比べて休憩1分で76%、休憩5分で152%上がった。テストステロンは休憩1分のほうが高かった

ただしこれは、1回の運動のあと数時間の反応です。筋肉が実際に大きくなるかは、この研究ではわかりません。何週間か続けたとき、筋肉の大きさにも差は出るのでしょうか。

筋トレ経験者が8週間続けた試験

2016年のアメリカの試験は、筋トレ経験のある若い男性21人を、休憩1分のグループと3分のグループに無作為に分けました。週3回の全身トレーニングで、7種目を8〜12回できる重量で3セットずつ行い、8週間続けています。休憩の長さ以外の条件はそろえました。

スクワットとベンチプレスで1回だけ持ち上げられる最大重量は、どちらも3分のグループのほうが大きく伸びていました。超音波で測った筋肉の厚さも、太ももの前側は3分のグループのほうが大きく増え、腕の後ろ側も同じ傾向でした。軽い重量で何回続けられるかという筋持久力には、差はありませんでした。

ただし21人の男性だけで、期間は8週間です。差を生んだのが休憩の長さそのものなのかは、この試験だけでは分けられません。

挙げた量の合計をそろえると、差はどうなった?

2022年のブラジルの試験は、この点を確かめています。28人が週2回、片脚ずつのレッグエクステンションを10週間続けました。重量は1回だけ持ち上げられる最大重量の80%です。

片脚ずつに、次の4つのやり方のどれかを割り当てました。

  • 休憩3分
  • 休憩1分
  • 休憩1分で、セットを足して3分の脚と同じ量(重量×回数の合計)にそろえる
  • 休憩3分で、1分の脚と同じ量にそろえる

1回だけ持ち上げられる最大重量は、4つとも26〜31%伸び、やり方による差はありませんでした。

太ももの前の筋肉の断面積は、休憩3分の脚で13.1%、休憩1分でも量をそろえた脚で12.9%増えました。休憩1分のままの脚と、休憩3分でも量を減らした脚は、6.8%と6.6%でした。

片脚ずつのレッグエクステンションを10週間続けた研究での、太ももの前の筋肉の断面積の増え方。休憩3分で13.1%、休憩1分でセットを足して量をそろえた脚で12.9%、休憩1分のままで6.8%、休憩3分で量を減らした脚で6.6%

著者らは、筋肥大に効いていたのは休憩の長さではなく、重量×回数の合計だったと考えています。では、ほかの研究も合わせて見ると、休憩の長さによる差はどのくらいになるのでしょうか。

研究をまとめた分析では

2017年に、休憩60秒以下と60秒超を比べた6つの研究をまとめた分析が出ています。著者らは、筋肥大にはどちらの休憩も使えるとしたうえで、筋トレ経験者を細かく測った新しい研究では、長い休憩のほうが有利かもしれないと書いています。

2024年の分析は、休憩の長さ以外をそろえた9つの無作為化試験から、19の測定(太もも10、腕6、全身3)をまとめました。休憩の長さにかかわらず、ほとんどのやり方で筋肉ははっきり増えていました。

60秒以下と60秒超を比べると、腕と太ももでは60秒超のほうが少しだけ大きく増える傾向でした。60秒超のほうが大きい確率は、腕で74%、太ももで88%と見積もられています。ただ、その差が「小さい」と呼べる大きさを超える確率は、どちらも5割前後でした。全身では差はほとんどなく、短い休憩がわずかに上回る程度でした。

著者らは、60秒を超える休憩にわずかな利点があり、それは持ち上げる量が減りにくいためかもしれないとまとめています。また、90秒を超えてさらに長く休んでも、筋肥大にはっきりした差は見つからなかったとしています。

休憩の長さとわかっていることの表。60秒以下でも筋肉は増え筋力も伸びる。60秒を超えると腕と太ももで筋肉がわずかに大きく増える傾向。90秒を超えると、それ以上長くしても、筋肥大でははっきりした差は見つかっていない。2分を超える休憩は筋トレ経験者が筋力を最大限に伸ばすのに必要そう

筋肥大では、差はあっても小さいようです。筋力のほうは、少し違う結果が出ています。

筋力では、経験によって分かれた

2018年の分析は、休憩の長さを変えて筋力の伸びを比べた23の研究(491人、うち女性78人)をまとめています。

60秒未満の短い休憩でも、筋力はしっかり伸びていました。そのうえで著者らは、筋トレ経験者が筋力を最大限に伸ばすには2分を超える休憩が必要そうだとし、未経験の人なら60〜120秒で十分そうだとしています。

取り違えやすい点

ひとつめは、短い休憩が無駄というわけではないことです。2024年の分析でも、60秒以下の休憩で筋肉ははっきり増えていました。差は、増えるか増えないかではなく、増え方がわずかに違うかどうかの話です。

ふたつめは、運動直後の血液の数値では、筋肉の増え方を判断できないことです。2016年のイギリスの研究では、テストステロンが高かった1分休憩のほうで、筋肉を作る反応は小さくなっていました。

みっつめは、長い休憩の効き目の中身です。2022年の試験では、1分休憩でもセットを足して量をそろえると、3分休憩と同じくらい筋肉が増えました。ただしその分、セット数が増えます。休憩を縮めても、ジムにいる時間が同じだけ短くなるとは限りません。

まだわかっていないこと

  • 胸・背中・肩など胴体の筋肉での違い。2024年の分析では、胴体の筋肉を調べた研究がなかった
  • 筋トレ経験者や年齢の高い人での筋肥大の違い。まとめた研究の多くは筋トレ未経験の若い人で、経験者だけの分析はできなかった
  • 半年や1年続けたときの差。試験の期間は5〜10週間だった
  • 1部位あたりのセット数がかなり多いプログラムでの違い。調べた試験のセット数はふつう程度だった
  • 種目ごとに何秒休めばいいか。スクワットのような多関節種目とマシンの単関節種目では疲れ方が違う可能性があり、まだ確かめられていない

まとめと今日から試せること

筋肥大では、60秒以下より長く休んだほうが、筋肉がわずかに大きく増える傾向がありました。90秒を超えて長くしても、上乗せは見えていません。そして2022年の試験では、筋肉の増え方を左右していたのは、休憩の長さよりその日にこなした量の合計でした。

重量を伸ばしたい経験者には、長めの休憩が向いていそうです。未経験の人なら、1〜2分で十分そうです。短い休憩でも、筋肉と筋力は伸びます。

  • 休憩はタイマーで測り、なんとなくで決めない
  • 同じ重量で1セット目と最後のセットの回数を書き留め、大きく落ちていたら次は休憩を延ばす
  • 筋肥大が目的なら、まずは90秒以上を基準にする
  • 重量を伸ばしたい種目だけでも、休憩を2〜3分とる
  • 時間がない日に休憩を1分にするなら、1セット足して、その日の合計を落とさない

参考文献

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